恐怖の泉

人間の怖い話「ここは俺の部屋」

これは、私が東京で一人暮らしをしていた時の話です。

当時の私は就職で引っ越しをしたばかりでした。
住まいは1K6畳、ごく当たり前の賃貸アパートで、場所は2階の角部屋。
アパートの立地は住宅街の中で、少し歩いて大通りに出ればコンビニや御飯屋も沢山。
不動産屋に案内されて物件を下見した私は、一目でそこを気に入り、その日の内に契約を決めた程の物件でした。

事件は、そのアパートに引っ越しをして2ヶ月ほど経った頃に起こりました。
週末の夜、私が一人部屋でテレビを見ていると、玄関から誰かがガチャガチャと鍵を弄る音がするのです。

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私はその時、咄嗟に(泥棒だ!)と思いました。
慌ててテレビのボリュームを下げ、居留守を使います。幸い玄関の鍵はちゃんと掛けていました。
ドアチェーンも掛けており、ただの泥棒なら直ぐに諦めてどこかに行くと思ったんです。

でも、期待に反して相手は帰ろうとはしませんでした。
ガチャガチャと鍵を弄っていたのが、やがてドアをバンバンと叩き、力任せに鍵をこじ開けようとし始めます。
空き巣にしてはおかしいですし、それ以前にこんなバンバンとドアを叩かれては堪りません。異常です。

「誰ですか?叩くの止めて下さい!」

堪らず私が部屋の中から大声を出すと、一瞬ドアを叩くのが止まりましたが、また直ぐに相手はガチャガチャとドアノブを回し始めました。

「止めて下さい!警察呼びますよ!」
「開けろよ。ここ、俺の部屋だろ?」
「は?誰ですか?部屋間違ってるんじゃないんですか?」
「開けろよ。ここ俺の部屋だから。俺の部屋だぞ。」

男の声でした。
苛立ってると言うよりは、純粋に不思議そうな声で
「ここは俺の部屋だ」
と繰り返し、玄関のドアを無理やりこじ開けようとします。
ドアノブをガチャガチャと回し、ついにはガリガリと、何か硬いものでドアをひっかくような音さえし始めました。

私は半ばパニックになりました。
俺の部屋も何も、ここは2ヶ月前から私が家賃を払って借りている部屋です。
近所に住んでいた大家さんにも挨拶をしており、何かの手違いがあるといったことも絶対にありません。

「ここは私の部屋です!今すぐ出ていかないと警察呼びますからね!」

私が叫ぶようにそう言うと、ようやく相手はドアを叩くのを止め、しばらくすると玄関の前から人の気配も遠ざかっていきました。

静かになったことに安堵したものの、それでも私はじっと耳を澄ませて、本当に相手が居なくなったかどうかを確かめました。

5分程経ち、男が居なくなったことを確認した私は恐る恐る玄関のドアへ近寄り、ドアスコープから外を覗こうとして…
そこで、私はドアから強烈な異臭が漂ってきていることに気が付きました。
異臭と言うか、ほぼ確実に排泄物の匂いです。
強烈な便臭がドアの向こうから臭ってきているのです!

私は、そこで心が折れました。
当時付き合っていた彼氏に電話をして、とにかく家まで来てくれるようにと半泣きになりながら頼み込みました。
彼も最初は渋っていたのですが、私の対応が異常だったのに気が付いたのでしょう。
すぐに車で迎えに来てくれることになりました。

幸い、彼の家から私の家まで車を走らせれば10分もかかりません。
茫然と窓から外を眺めていると、アパートの前に見覚えのある彼の車が止まり、やがて部屋の呼び鈴が鳴らされました。
しっかりインターホンの映像とドアスコープで相手の顔をチェック。間違いなく彼氏です。
私は恐る恐るドアを開けました。

「来たけど…お前、なにこれ。なんかドアめちゃくちゃになってんぞ…。」

彼の言葉に私は玄関の扉を外から見て…惨状に絶句しました。

扉一面に排泄物が汚らしくなすりつけられており、それ以外の場所はひっかき傷だらけ。
ノブや鍵穴のある辺りは特にひどく、特に鍵穴は何か硬いものでグチャグチャに潰されていて、外からでは鍵を差し込むことすら出来ません。
結局、その日の晩は警察を呼んで大家さんにも連絡を入れてと大騒ぎでした。

事件後、私はすぐに部屋を引き払いました。
本当はお気に入りだったので引っ越しまでする気はなかったのですが、デタラメに見えたドアのひっかき傷が実は文字だったと気が付いた時、私は心底ゾッとしたのです。
ドアにはひっかき傷で、こんな文字が書かれていました。

ココ ハ オレ ノ ヘヤ

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