恐怖の泉

実話系・怖い話「黒い服のおじさん」

私が6歳の頃、母に頼まれて1人で買い物に行った時の事です。

私は母から千円札を1枚と、買う物をメモした紙を手渡されました。
外は真夏で暑かった為か、母も買い物が億劫になってしまったんだなと思いながら、お釣りは小遣いとして貰えると聞いて、喜んでスーパーへ買い物に行きました。
徒歩で20分程の場所にあるスーパーへ千円札を握りしめて、メモはスカートのポケットに入れていました。

道を歩いていると、遠くの方に上下が黒い服、黒い帽子を被った知らないおじさんが、私がいる方向へ歩いてくるのが見えました。
歩道なので他にも行き交う人はいたのですが、何故かそのおじさんだけが気になって仕方ありませんでした。
真夏の暑い日に頭の先から下までが黒い洋服だったので、違和感から注意を引いたのかも知れません。

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それでも私は気にしない様にしながら、鼻歌交じりで歩いていきます。
お互いに向かい合って進んでいますから、距離は近づくはずなのに…一向にすれ違う気配がありません。
不思議だなぁ~と思いながらも、私も子供だったので横道にそれて立ち止まったりしてましたから、あまり深くは考えていませんでした。

と次の瞬間、強い風が吹いて砂が舞い、私は両手を顔に当てて砂が目に入らないようにガードしたんです。
一瞬の事だったので、咄嗟に顔を隠したせいか、母から貰った千円札を手放して無くしてしまいました。

私は
(探さなきゃ…)
と焦りながら、自分の周りをキョロキョロと見渡し、歩道の横の草むらを怪しんで踏み入ります。
そんなに雑草が生い茂っていたわけでも無かったので、ガサガサと草をかき分けて千円札を探していると、折り畳んだままのお金を見つけました。

(お母さんに叱られないで済む)
ホッとしながらしゃがんでお金を拾おうとした時、目の前に黒い足が見えたんです。

私は、誰かにお金を取られてしまうと思ってしゃがんだまま
「わ、私のお金です。」
と言って首を上に向けたのですが…
そこには何にも見えなくて、青空だけが広がっていました。

(おかしいなぁ?確かに黒い足がみえたのになぁ…。)
と心の中で思いながら、また下を見てお金を拾おうとすると、やっぱり確かに膝から下の黒い足が見えているんです。

私は、背筋にゾッとする冷たい物を感じました。

恐怖からしゃがんだままお金を握りしめ、じっと動かずにいると、膝から下だけの足が私の横を歩いて通り過ぎるのが見えました。
何が何だか分からなかったのですが、黒い足が私の視野から見えなくなった後、いけないと直感では分かっていたのですが…
しゃがんだまま、少しだけ体の向きを変えて後ろを振り返ってしまいました。

私から少し離れた後ろには、さっき道で見た黒い服のおじさんの後ろ姿が見えました。
私がおじさんの後ろ姿を見ていると、おじさんは振り返ったのです。
そして私と目が合うと、何とも言えない笑みを浮かべて、スッと消えて居なくなってしまいました。

黒い服のおじさんを近くで見て気付いたのですが、私が黒い服だと思っていたのは洋服ではなく、真っ黒に焼けただれた体でした。
それがぼんやりと黒く見えていたんです。
顔だけは黒くなかったのですが、生きている人間ではないというのは確かでした。

私は震えが治まらない体を起こし
(見なかった事にしよう)
と思いながら、なるべく人通りの多い道へ移動して遠回りしながら、スーパーへと向かいました。

黒い服のおじさんを見た道路は通学路になっていて、その後は見る事も無かったのですが、やはり怖いのでなるべく通る事は避ける様になりました。
今でも思い出すだけでゾッとする、私の恐怖体験でした。

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