実話系・怖い話「発疹チフス」
発疹チフス(ほっしんちふす)は、ウイルスのように細胞内でしか生息できない「リケッチア」という細菌による感染症です。
不衛生な人口密集地や、同じ衣類を長期間身に付ける環境で流行がみられる特徴があり、過去には戦場や貧困地、刑務所、収容所で発生し多くの犠牲者が出たことがあります。
日本においても世界大戦中や戦後に流行がみられましたが、衛生環境の改善と共に患者は激減し、近年では国内の発生はみられません。
現在ではアフリカ大陸や南米の山岳寒冷地を中心に感染が報告されています。
名前も症状も似通った感染症に「腸チフス」がありますが、原因となる細菌が違います。
感染経路
感染経路は虱(シラミ)やダニです。人から人へは感染しません。
とりわけ衣類につくコロモジラミが重要な感染源として知られています。
発疹チフスリケッチアに感染した人へシラミがつくと、人からシラミへ細菌が移り、シラミを介して感染が広がります。
シラミから人へは吸血のみならず、シラミの糞や死骸、潰してしまったシラミの個体が、掻きむしった事で傷付いた体・粘膜へ付着することでも感染します。
シラミの死骸や糞が空気中に浮遊した物を吸い込んで感染することもあります。
発疹チフスリケッチアは、数ヶ月間もの長期に渡ってシラミの死骸や糞の中で感染力を保持したまま生息します。
そのため、環境が整うと爆発的に感染が広がる危険があります。
原因菌の自然宿主にはダニやムササビが疑われており、そこから発疹チフスになったと思われるケースも報告されています。
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症状
感染から6~15日程度は無症状ですが、その後39度以上の高熱と、頭痛、発疹、倦怠感、寒気、嘔吐、手足の痛み、意識障害といった症状が現れます。
発疹は病名に冠するほど特徴があり、発病から1週間ほどで体幹から出現し、全身に広がります。顔や手掌、足裏に出る事は稀です。
発疹はピンク色から次第に暗紫色へと、色が変化していきます。
高熱は2週間ほどで下がりますが、重症化するとうわごとを発する、幻覚、精神錯乱、昏睡といった意識障害が起きます。
未治療の場合、年齢によって死亡率はバラつきがありますが、平均で約60%と高い致死性のある病気です。
20歳以下だと数%、そこから年齢を追うごとに死亡率が上昇し、60歳以上だとほぼ100%死に至ります。
一度感染すると免疫が出来てしばらくは再感染しませんが、ごく稀に発疹チフスリケッチアが人体で長期間潜伏した後に再発する「ブリル・ジンサー病」となることがあります。
その場合、死亡率や症状は軽くなります。
治療・予防方法
発疹チフスの治療は抗生物質の投与です。
適切な治療が早期に成されれば亡くなるまで重症化することは稀ですが、近年では発生が稀となった病気なため、正確な診断が課題となっています。
ワクチンはあるのですが、世界的にも患者が少なく需要が少ないため、市場に出回ってはいないようです。
発疹チフスの一番の予防は、シラミの駆除です。特にコロモジラミは警戒する必要があります。
生活環境を清潔に保ち、衣類や寝具の小まめな洗濯・掃除・交換を心がけます。
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