恐怖の泉

実話系・怖い話「旅館名 幽霊」

ある年の2月、私達は息抜きと子供の誕生祝いを兼ねて、M県のIへ旅行に行きました。
恥ずかしながら夫婦の稼ぎは一般家庭よりも少し低めなので…それほど贅沢はできません。
そこで平日に行けて、その中でも1番安い旅館に宿泊する事としました。

そこは口コミがかなり低い旅館で、築年数も古かったのですが、とりあえず寝れたらいいかなくらいの感じで決めました。
その分旅館以外はしっかりと楽しもうと思い、遊園地や水族館などを巡って美味しい物をたくさん食べ、妻も子供も大満足してくれました。

夕方になって、そろそろ旅館へ向かおうと思った私は、迎えのバスをお願いする為に旅館の電話番号をネットで調べる事にしました。

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旅館を予約した時には気付かなかったのですが、検索ページで旅館名を入れてみると思わぬ事態が起きました。
「○○荘 幽霊」「○○荘 出る ○○号室」
など、検索候補に不気味な言葉が出てくるのです。

築年数が古いからある程度仕方は無いかとは思ったのですが、最初から知っていたら予約しなかったのにな…と後悔しつつ、気になったので検索結果を見てみました。
しかしそれらしい内容が記載されたページは見つからず、モヤモヤとした気持ちのまま旅館へ向かう事となりました。

旅館に着くと、想像以上にお化けが出そうな雰囲気が漂っていました。
女将さんも旅館の方というか、よく分からないのですが近所の人のお手伝い?と言った感じです。
さらに悪い事に、チェックインした部屋は検索候補のキーワードに掛かった「○○号室」だったのです。

これはさすがに駄目だと感じた私は、妻と子供に悟られないよう受付へ向かい、部屋を変更して欲しいとお願いしました。
しかしその日は満室だから変更は出来ないとの事。
こんな平日に満室な訳ないだろう!と言いたかったのですが、騒ぎになって妻と子供に嫌な気分をさせてはいけないと思い、仕方なくそのまま宿泊する事にしました。

ところが部屋へ入ってみると、外観の割に部屋は綺麗で、お風呂も広くご飯も美味しかったりと、思ったより快適です。
お酒も入り、少し良い心地になった私は幽霊の検索ワードの事はすっかり頭の中から抜けていました。

食事を終え、お風呂に入った後まだお酒が飲み足らなかった私は、売店でお酒とおつまみを購入して部屋で晩酌する事にしました。
旅行の開放感から、ビールやチューハイを普段よりも沢山飲み、とってもいい気分です。
その後1~2時間くらい眠ってしまっていたのですが、妻のシクシクと泣く声で目が覚めました。

私は意識が朦朧とする中、妻に
「何かあったの?」
と声を掛けました。
すると妻は
「とっても楽しくて楽しくて。こんな楽しいのは何年ぶりかしら。本当にありがとうね。」
と返事がありました。

その時、妻の声とは少し違うような気がするな?と違和感は覚えたのですが、お酒に酔ってフラフラだった私は特に気に留めず、再び眠る事にしました。

しかしこれから眠りに入ろうかという時、突然ガチャっと扉が開く音が。
妻と子供が眠っているので、一体誰だと飛び起きて扉の方に向かうと…そこには妻と子供が立っていました。

私は妻に
「あれ?今そこで寝てたんじゃないの!?」
と確認すると
「あんたが寝ちゃったから、子供と一緒にお風呂に行ってたのよ。寝ぼけてんじゃないの?」
と、冷ややかな表情です。
いやいやそんなはずは…と妻が寝ていた布団を見てみると、涙をこぼしたような跡が数滴あるのに気付きました。

もしかして女の幽霊だったのかと背筋が凍ったようになりましたが、家族を守らなければと瞬時に頭を切り替え、その日は眠らずに妻と子供を見張り続けました。
結局その後は幽霊が出る事はありませんでしたが、楽しいハズの旅行が私だけ疲れを溜めて帰る事になってしまいました。

この旅行依頼、私が宿を予約する際は検索ワードに「旅館名 幽霊」を入力するようにしています。

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