実話系・怖い話「家族ではない足」
今から数年前の夏の日曜日。
昼過ぎ頃だったでしょうか、20歳になる娘が珍しくあわててキャーキャー騒いでいることがありました。
トイレからあわてて出てきた娘は
「ねぇ、お父さんはどんな靴下履いてる?あれっ、違うね!」
「じゃあ、お母さんはどこに行ったの?ねえ!」
と叫ぶように言いました。
僕が
「お母さんはベランダで、洗濯物を干してるよ。」
と言うと、娘は
「お父さん、お母さんはどんな靴下履いてた?どんな色の?」
と必死の形相で訊いてきました。
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娘に何が起きたのか、さっぱりわかりません。
とりあえず僕は
「いや、どうだっけ?確か白いのかな?よく覚えていないよ。」
と言うと、娘は
「じゃ、お母さんにきいてくる!」
と言ってベランダの方に駆けていきました。
僕もそちらの方へ向かうと、ベランダから
「えーお母さん、ほんとに白い靴下履いてたんだ!なんでー?さっきも同じの履いてたー?」
という大きな娘の声が聞こえてきました。
妻は
「いったいなんの話し?あたりまえでしょ!1日に何度も靴下替える人っているの?アハハ!」
と、笑いながら話しています。
そのとき、息子が部屋から「なに騒いでるの?」と出てきました。
娘は
「あっ、お兄ちゃん、足は…違う、裸足だ。」
「じゃ、やっぱり誰?さっきの人は?」
と言って、泣き出してしまいました。
後に聞いた娘の話をまとめると、こうです。
我が家のトイレは玄関から続く長い廊下の右側にあり、トイレのドアには、下側に位置するように空気取入れ口が設けられています。
この空気取入れ口には、トイレ内側から廊下側に向かって斜めの板が何枚かはめられていて、ドアの外側から中は見えないけれど、便座に座っていれば廊下が見えるようになっています。
娘は、何気なく見た空気取入れ口から足が見えたそうです。
ですがその足が、小学生くらいの小さい感じで靴下は学生が履くような黒く薄い感じのものだったそうです。
足の主は玄関側から来て、静かにゆっくりとドアの前を通り過ぎリビングの方に行った、とのことでした。
我が家は私と妻と娘息子、4人家族です。
息子も娘も成人していますから、小学生くらいの小さな足の子はもういません。
つまり、その足の主は家族ではない「誰か」というわけです。
誰かが家に入ってきたわけでもなさそうだ、ということは…。
この話を聞いた息子も
「えーめっちゃ怖いんだけど!そんなことホントにあるのかよ!しかも真昼間なのにお化けって出るのかよ!」
と言って震えていました。
しばらく沈黙が続いていましたが、娘は
「このところ大学の勉強で根詰めて疲れてたから、見間違えたのかもしれないね!」
と言い、息子も
「そうだよな、見間違い見間違い!勉強ばっかりやってないでたまには外に行ってこいよ!」
と行って、その場はとりあえず収まりました。
それから3ヶ月ほど経った頃でしょうか。
午後3時ぐらいだったと思いますが、僕がトイレで座って何気なく空気取入れ口を見ていると…黒くて小さな足がゆっくりとした動きで通り過ぎました。
「えっ!この足!もしや娘が言ってたのはこれだったのか!」
と僕は驚き、手を洗って急いでトイレを出ましたが、誰もいません。
その後は今のところ足を見ていませんが、何とも不気味な出来事です。
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