恐怖の泉

実話系・怖い話「カップルの幽霊」

これは初日の出が美しく見られると、私の住む地域では有名な山頂を訪れた時の出来事です。

車で山頂まで登ったのですが、行き交う車は一切なく真っ暗な林道を走っていました。
山頂に着くと車は私の1台しかなく、人気はもちろんありません。
じっと1人で初日の出が登るのを今か今かと待っていると、ようやく太陽が姿を表し眩しい光が一面をキラキラと輝かせ始めました。
噂に違わぬ光景だったため、持参していた一眼カメラで刻一刻と変わる風景を撮影するのに集中していました。

5分ほど撮影を続けた頃でしょうか。
レンズから顔を離し撮影した写真を液晶画面で確認をしようとすると、一眼カメラの向こう側に2人の若いカップルがいることに気づきました。

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「あれ?初日の出を見にきた人が自分以外にもいたのかな?」
その時は特に気にせず、撮影した写真の確認を行っていました。
写真のチェックが終わった後もまだカップルは同じ場所にいて、峠の方を見ていました。
しかしこの時ふと
「この2人はどうやってここまで来たんだろう?」
と違和感を覚えました。

近くには車やバイクは見当たりません。
決して山頂まで登ることができないような標高ではないのですが、初日の出を見るために山頂まで歩いて登ってきたのであれば、私が車で登って来る間に姿を見ていてもおかしくありません。
私の前に山頂へ着いていたのかとも思いましたが、私が到着した際には誰もいませんでしたし、隠れる場所もない地形です。
それでも朝日がさした山頂の景色を逃すまいと撮影に夢中になっていると、いつの間にかカップルの姿は消えていました。

本当に物音ひとつせずに忽然と姿を消したので、「もしかしてお化け?」という考えが頭をよぎりました。
怖くなった私はとりあえず撮影を終わらせて、早く人気のある場所へ移動しようと車に飛び乗りました。
ですが来た道と同じコースを進んでいたつもりが、走れば走るほど見たことのない景色や木々ばかりです。

「とにかくここを早く離れなきゃ…!」
来た時と違う道であることはわかっていましたが、怖さでパニックになりかけていた私はひたすらにアクセルを踏み続け前進しました。
しかし進めば進むほど木々は深くなり道幅も狭くなるばかりです。
「これ以上はやっぱりダメだ。引き返して元の道を探そう。」
一度冷静になろうと車から降りて外の空気を吸おうとした時、衝撃が走りました。

なんと車の前方30cmくらい先でいきなり道が切れて崖になっていました。

道路を横断するように枝や植物が飛び出していたので、車からは良く見えていませんでした。
もしこのまま進んでいたら間違いなく転落していたと思うと、背筋がゾッとしました。

結局、人里に降りた頃には片道1時間のはずが3時間もかかってしまいました。
そして安心したのかお腹も空いたので、食堂で食事をしながら今体験した出来事を店員に話すると
「それ、もしかしたら先日山頂で自殺したカップルの霊かもしれないよ。」
と言われました。

そのカップルと私が見た2人の特徴は一致していました。
さらにはその山は自殺者も多い所だという情報も聞き、それ以来2度と立ち寄らないようにしています。

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