恐怖の泉

実話系・怖い話「ネズミの落とし穴」

これは両親の購入した、築10年ほどの中古住宅の話です。

転勤族だった父が、勤めていた会社を定年退職したのを機に、関東の某県で家を買いました。
その頃既に私は親元を離れて大学に通っていたので、その家の選定には殆ど関わっていません。
たまに電話で話をしては、母相手に雑談がてらあーだこーだと適当な希望を言った程度です(私の部屋も用意しておいてね、とか)。

私が初めてその家を見たのは、引越し当日のお手伝いに行った時です。
その時は特に悪い印象もなく、ただ大きいなぁ、広いなぁとしか思いませんでした。
実際部屋数はタップリで、夫婦2人で住むには部屋が余るくらい。リビングも広く、中央には一辺30cmほどの太い角柱が、どーんとそびえていたのが印象的でした。
見た目も綺麗で、大きな庭付き。母が1年掛けて関東中の不動産屋を巡って探し出したと自慢するだけあり、立派なものです。
ちょうど大学が春休みの時期だったこともあり、お手伝いがてら1週間程新しい家に滞在したのですが、両親はずっと上機嫌でした。

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その後私は大学に戻り、それからしばらくは特に何ということもなく過ぎました。
そして夏休みになってまた帰省したのですが、到着して直ぐに異常を感じました。

父も、母も、なんだか妙にやつれているのです。
しかも、家の中が生臭い…。
両親は何でもないと言うのですが、どうもあまり眠れていない様子です。

最初、私は欠陥住宅ではないかと疑いました。
一見キレイなようで、壁紙の裏はカビでびっしり、とかよく聞く話じゃないですか?
ただ、私がいくら家の中の様子をあちこち探ってみても、そんな欠陥は見当たりません。壁も水回りも綺麗なものです。

結局1週間ほどの滞在でははっきりしたことは何もわからず、私は一度不動産屋にも相談したほうがいい、と忠告することしか出来ませんでした。

それから2ヶ月後、母が倒れました。
父から連絡を貰った私は、慌てて病院へ向かいます。
幸いと言っていいかどうか、どうやら貧血の一種らしく後遺症もなく治りそうだということで、そこはまず一安心。
ただ数日ほど入院が必要とのことで、私も両親の家に泊まり込み、母が居ない間の父の世話を行うことにしました。

そして実家へ行ってみると…悪化していました。

何かが腐ったような、前よりも強く強烈な匂いと、天井裏を走るネズミの足音。
父は
「田舎なんだからこんなものだ」
と言うのですが、私にはとても耐えられません。

話を聞いてみるとずっと前からネズミは居て、うるさくなる時期もあればそうでない時期もある、最近は前よりうるさくなった、と不安な返答。
渋る父に対し、私は
「ネズミのいる家に帰ってきたら、母の病気が悪化するかも!」
と父をなんとか説得し、ねずみ駆除業者を呼ぶことを了承させました。

翌日、4人組の駆除業者さんがやってきました。
業者さんは、家に来るとすぐに
「あれ?なんか臭いっすね。」
と言いつつ、屋根裏や床下などの点検を開始。
どうも1階と2階の間の隙間にネズミの巣があったようで、じゃあそれを撤去してネズミを駆除すれば大丈夫なんだ!と思ったのですが…どうにもそれだけではない様子です。
しばらくした後、年嵩の業者さんから
「ちょっとうちだけじゃ難しい話なんですが…」
と声を掛けられました。

結論から書くと、原因はリビングに立つ角柱にありました。
この柱は見た目は大きな角柱ですが、実際には中が中空になっており、しかも本来塞がれているはずの天辺が空いたまま。
まるで天然の落とし穴のようになっていたのだそうです。

後日、別の業者さんに角柱を解体して貰ったところ、上から落ちて出られなくなったんでしょう。
柱と1階の基礎の隙間から、大量のネズミの骨がごっそりと出てきました。
穴に落ちて餓死したネズミの死体の直ぐ側で、うちの両親はテレビを見たり食事をしたりしてたんですから、そりゃ体調だって悪くなろうと言うものです。

その後は柱を取り替え、お坊さんまで呼んでネズミの供養も行いました。
そして臭い匂いもなくなり、業者に頼んだねずみ駆除も効いたようで、元気になった両親は今でもその家に住んでいます。

私は、これは稀な欠陥住宅の話だと思っています。
ただ駆除業者さんが
「いや~、割とよくありますよ。ちょっと古い家だと、屋根裏や家具の隙間なんかネズミの死体がゴロゴロしてますからね。」
と笑顔で言っていたのが逆に怖かったです。
もう古い家には住めません…。

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