恐怖の泉

実話系・怖い話「広東住血線虫」

広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)は寄生虫の一種で、非宿主である人や動物の体内へ入ると「広東住血線虫症」を引き起こし、死亡することもあります。
広東という名前は、この線虫が中国の広東省で発見されたことに由来しています。

広東住血線虫は世界中に分布していますが、この虫による病気は主に東南アジアや太平洋諸島で発生しています。
日本においても2003年8月時点で54例の感染者が報告されており、2000年(平成12年)には沖縄県で、広東住血線虫症により1名の方が亡くなってしまいました。

カタツムリのアフリカマイマイはこの寄生虫の重要な中間宿主として挙げられている他、農作物を食い荒らすため植物防疫法の有害動物に指定されており、生きたままの持込や移動が禁止されています。

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感染経路

広東住血線虫は、ネズミを終宿主、カタツムリまたはナメクジを中間宿主として寄生・成長するサイクルを持っています。
元から寄生されている宿主にいる間は悪さをすることはありません。

広東住血線虫の成虫はネズミの肺で卵を産んで孵化し幼虫となり、糞と共に排出されます。
その糞を摂取したカタツムリやナメクジの体内で幼虫は変態を繰り返し、成虫への準備を整えます。
そしてカタツムリやナメクジをネズミが食べることで成虫になる、という生活環を持っています。

人間への感染は、感染能力を持った幼虫がいる宿主を食べたり接触することが原因となります。人から人への感染はありません。
広東住血線虫はカタツムリやナメクジの他にも、淡水生のエビ・カニ・巻貝、カエル、プラナリア類、爬虫類といった生き物の体内で、感染力がある状態で生息します。
非加熱でこれらの生物を口にしたり、直接触れる事は避けるといった対策が望まれます。

保虫率が高いのはアフリカマイマイですが、他種のカタツムリやナメクジにも広東住血線虫が潜んでいる、という研究結果が報告されています。
特に死んでいる個体には、大量の広東住血線虫が生息している可能性が高いので、接触は避けるのが無難です。
またカタツムリやナメクジが這った後のネバネバにも広東住血線虫がいる可能性がありますので、注意が必要です。

余談ですが、しっかりと衛生管理された場所で養殖された食用エスカルゴは寄生虫の心配が無く、安心して食べることが出来ます。
エスカルゴで有名なイタリアでは、広東住血線虫症の発生は未だ報告されていません。

症状

広東住血線虫が人の体内へ入ると、脊髄に移動して脳内や目へ主に感染します。
ですが人体では生息できず死滅するため、感染しても虫が検出されない場合も多いです。

感染してから発病までの潜伏期間はおよそ2週間です。
患者のほとんどは好酸球性髄膜脳炎となり、頭痛、発熱、嘔吐、知覚異常、めまい、痙攣、神経異常、肉芽腫形成、視力障害といった症状を引き起こします。
症例がまだ少なく、致死率など統計的なデータは不確定な部分があります。

患者のほとんどは1ヶ月ほどで回復しますが、大量の広東住血線虫が体内へ入ると昏睡状態となり死亡したり、失明する場合もあります。

治療・予防方法

広東住血線虫症は治療方法がまだなく、対処療法で経過をみます。
人体に入った寄生虫は生き長らえることが出来ないため、大事に至ることは少ない病気ですが、上記したように大量の虫が侵入すると死亡に繋がる事もあるため、油断は出来ません。

予防方法は宿主を口にしない事が第一です。食べる場合は、必ず加熱処理が必要です。
宿主の疑いがある生物を触った場合は手をよく洗うことも重要です。広東住血線虫は傷口や皮膚からも体内へ侵入しますので、注意して下さい。
カタツムリやナメクジ等、宿主が居た野菜や果物を生食して感染するケースも報告されています。生野菜等を調理摂食する場合はよく洗浄してからにする、火を通すといったひと手間が感染を予防します。

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