恐怖の泉

実話系・怖い話「一過性全健忘」

これは怖いと言うか、訳のわからんかった話。
いや、当時は普通に怖かったけど。

俺、都内の大学に通ってる大学生だけど、以前訳のわからん体験をしたんだよね。
二時間目。午前中の般教の講義を大教室で受けてて、はっと気が付いたら、前で喋ってたはずの教授がもう居ねーの。
周りの学生たちはみんな帰り支度してて。

やべーなー、寝ちまったよ。ノート全く取ってないけど、まあ後で講義ノートでも買うか、誰か知り合いでこの講義取ってなかったかなぁ。
まぁそんな事考えながら慌てて身仕舞して教室を出た。

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で、そこでキャンパスの中庭にある時計見て気が付いたんだけど、時間がいつの間にか昼過ぎてんのね。
もう昼の三時過ぎで、二時間目だったつもりがもう三時間目まで終わってた。

講義の一つや二つ寝倒すことくらい、それまでもなかった訳じゃないけど、流石に気が付きもせずに完全寝落ちスルーはまずいだろ…と思いながらスマホ見て、またびっくり。
今日は11日の月曜日だと思ってたら、スマホの日付は15日になってた。
二度見とかそんなもんじゃない。
最初は日付が狂ったかと思ったけど、スマホの時計って電波の自動補正。そんなの狂うはずない。

この辺になってくると軽くパニックが起き、ニュースアプリ見たりテレビ見たり色々したけど、確かに今日は15日で金曜日らしい。
別に世間はおかしいこともなく、ごく普通に昼のニュースとかが流れてる。

でも俺、全然覚えてない。記憶だって別に飛んでない(いや、飛んではいるんだけど)。
月曜日、朝から大学かよ、うぜー、とか思いながら通勤電車に乗って、大学行って、大教室でノート広げて…
ちょっとうたた寝したらいつの間にか世間は四日過ぎてたとか、ホントそんな感じ。

これマジ?本当?俺大丈夫か?

もー頭の中はそればっかぐるぐる回って、脳溢血とか脳梗塞とか病気を本気で疑った。得体の知れない焦りがあった。
しばらくしてパニックがちょっと落ち着いた後で、ふと思い立って友達に電話しようと思った。
高校からの友達で、まあ親友だ。受けてる講義も結構被ってるから、その日も大学に来てるはずだとも思ったし。そいつを仮にAとしとく。

「おいA、今日何曜日?つーか何日?」
「え?15日だけど。」

電話が通じて速攻聞いたけど、やっぱ15日だった。
俺も色々焦ってたし、電話でべらべら喋ってたら、向こうもなんか俺の様子が変だということに気が付いたみたいで、とにかく会おうと。
幸いAは大学にいて、それからすぐに学食でAと合流した。

やってきたAに色々質問したけど、なんと俺は今日、Aと一緒に昼飯を食ってたそうだ。
勿論俺にはそんな記憶全然ない。
13日にもAと一緒に遊んだらしいが、Aが言うには特に変わった様子もなく、俺は普通にいつも通りの感じだったらしい。

Aと喋った結果、マジで病院行った方がいいんじゃね?ということになった。
親にも連絡して、大学を出てそのまま近所の病院へ。Aも一緒に病院へ付き添ってくれた。マジ感謝してる。
その後は脳神経外科に掛かり、医者に診察してもらってMRIも撮った。

最終的に医者が言うには「一過性全健忘」だろうと。
俺みたいに突然短期的な記憶喪失みたいになって、病院に慌てて飛び込んでくる患者がたまにいるらしい。
特に脳に異常は見られない、記憶は戻らないだろうが再発もしないだろうということで、一応一安心。
実際それからもう何ヶ月か経ってるけど、以後は何が起こることもなく毎日普通に暮らしてる。

ただ気がかりなのが、一つだけ変なことがあった。

しばらくして落ち着いてから、メール見直したりLINE確認したり、記憶のない時期に俺が何してたか改めて調べ直してたんだけど、どうも俺はこの間に「B」という人間と知り合いになったらしい。

「なあ、A。このBって奴誰や?」
「知らん。最近講義で知り合いになったとかお前言ってたぞ。」

確かに、Aに送ったLINEには「最近知り合ったBをAにも紹介する」というような内容が残ってた。
でも、調べてみても俺の受けてる講義に「B」という名前の奴はどこにもいない。教授にも聞いて確認した。
部外者が講義に紛れ込むこともあるから、しばらくはBらしき人間が周囲にいないかどうか注意して探してたけど、Bと出会うことはその後一度もなかった。

結局、俺の記憶ごと「B」という存在も完全に身の回りから消えてしまったらしい。
別の友人からは、俺が14日に見たことない女と一緒に歩いていたという話も聞いたけど、それだけで手がかりは何も無し。
はじめの内はムキになって探したけど、あんまり手掛かりがないもんだから逆に怖くなって、今はもう探してない。

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