恐怖の泉

実話系・怖い話「私だけが見た異変」

これは私が遭遇した、唯一の不思議な体験です。
今でもはっきりとその光景が思い出されるのですが、それは数年前の夏の夜のことでした。

その当時夏休みを利用して、友人たちとどこかへ泊まりがけで行こう、ということになりました。
合計7人、車2台で友人の知り合いの別荘にということで、話は決まりました。
都内で落ち合い、もう日暮れ時の夕方。遅めの出発でした。

辺りはすっかり暗くなり、途中で夕食を摂りました。
何だかんだで9時過ぎぐらいだったでしょうか。
まだ時間に余裕があるかなんて話をしながら、じゃあ少し遠回りして山道を通って行こうということになりました。

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私は車の運転が苦手なので道もさっぱりわからないのですが、何人かの詳しい友人が先導して車を走らせます。
進むにつれてだんだんと人気のない山道に差し掛かりました。
対向車もほぼ無くて、1人ではとても走れないほど寂れた雰囲気に薄気味悪い感じがしました。

途中くねくねとカーブが続きます。
崖がすぐそばですので、友人も暗い中注意しながら運転をし、しばらくすると正面に少し開けた場所が出ました。
とは言っても車が2台ぐらい停められる程度のスペースです。
そこに犬が5~6匹たむろしていました。

その場所を通りすがる際、私が何気なく
「この辺に犬飼ってる人なんているんかね。」
と言うと、みんな不思議そうな顔をしています。
「何急に?」
「え、今犬何匹かいたじゃない。」
「どこに?全然気がつかなかったわ。」

犬は私達の車から真正面に見える位置にいました。
あれで気がつかないということは、他の人には見えていないのかな…とも思いました。
そんなバカなと思いましたが、まあいいやと思いそのまま黙っていました。

山道をやっと抜けて海岸通りに出ると、街灯が灯っていたので少しホッとしました。
左に海を見ながらの広い道、時間はもう夜の12時を過ぎてました。
直線が続く視界の広がる道で、遠くに犬を連れたおじさんのような影が見えます。

おじさんは歩道をこちらに向かってゆっくり歩いてくるのですが、こんな遅い時間に散歩なのか…と思いつつ、すれ違いざまにおじさんを見ると…
なんと正面からは人影に見えていたはずが、横から見ると厚みがありません!

(えっ?人じゃない?)

うまく表現できないのですが、横から見ると紙のように薄っぺらいのです。
何かの見間違いかなと思ってビックリしたので、私は思わず他の友人に話しかけました。

「ねっ!今の人見た?」
「ん?何言ってんの?」
「今犬連れて歩いてた人だって!」
「?何もいなかったじゃん?」

もうわけがわかりませんでした。
誰も取り合ってくれず、冗談を言っている感じでもありません。
まるで狐につままれてるような気分でした。

そして別荘に到着。
別荘の持ち主の娘さんが出迎えてくれました。

ところが娘さんの飼っているプードルがキャンキャン吠えます。
しかも私に向かってだけ吠え続け、今にも噛み付きそうな勢いなのです。

「ごめんね、普段吠えることなんて絶対ないのにどうしたんだろう…」
「なんか臭うのかなぁ~ハハ~」

なんて冗談を返したのですが、部屋に通された後友人の1人がこっそり私に言いました。

「信じるかどうかはいいんだけどさ、おまえなんか憑いてるな今。おれそういうのはなんか感じるんだわ昔から。」
「やめてよ気味悪いわ。」
「でも、おまえさっきから変なことばかり言ってただろ?」

確かにそうです。
山道で見た犬、海岸通りですれ違った犬を連れたおじさん、絶対吠えないはずの犬に吠えられた。
全て犬が関係しているのです。

その友人が言うには、通ってきた山道は霊の力がすごく強い場所だそうで、そこを通ったのが原因ではないか、と言っていました。
そういうことに疎い私は、ただ聞いているしかありませんでした。
そもそも、知っていたならそんな山道を通るなよ!とも思いましたが。

もしこのまま変なことでも起こったらと心配しましたが、その後は何もなくホッとしたのを覚えています。
帰る途中には、心の中で「何も起きませんように」と祈りながら海岸通りを通り過ぎました。

あの日、私には何が憑いていたのでしょうか…。

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