恐怖の泉

実話系・怖い話「ダッシュする女」

これは私が大学生の時の話です。

私は大学へ通うために一人暮らしを始めました。
4階建てのマンションで、各階部屋が20戸ほどならんでいる造りでした。
だいたいですが80世帯ぐらいが入れる、結構大きめのワンルームマンションでした。

特段大学生専用という物件でもなく、私のような大学生からサラリーマン、ご夫婦で住んでらっしゃるような方もいるマンションです。
4階建てなのですがエレベーターはついてなく、変わりにマンションの両端に階段がついており、片方は正面玄関、片方は駐輪場などがある方に降りれる階段でした。

スポンサーリンク

初めての一人暮らしだったので色々と大変でしたが、1ヶ月もすると自炊にも慣れ、特段困る事はありませんでした。
マンションの住人の方も顔ぐらいは分かるようになり、朝や夜にすれ違ったりすると「おはよう」や「こんばんは」とあいさつを交わすぐらいの関係にはなっていました。

私の部屋は4階の端っこにありまして、駐輪場に繋がる方の階段がすぐそば、要するに正面玄関からは一番遠い所の部屋でした。
部屋の中には窓がついているのですが、曇りガラスで全く外は見えません。
窓の端がちょっとだけ開閉でき、開けるとギリギリ外が見えるかな…というような窓でした。
まあ、要するに賃料が高いマンションではないという事です。

同じ学部の人も1階に住んでおり、特段仲良くないのですが
「あ、40*に住んでるんですよ~」
「俺は10*に住んでますよ。困った事あったら言ってね~」
みたいな会話は一度あったぐらいでした。

6月の中頃、バイト先の居酒屋から帰ってきてご飯を食べるともう12時ちょっと手前でした。
明日も授業があるので、もう寝るかと思い、いつものように電気を消して寝ようと布団に入りました。

それから5分後ぐらいに、廊下を誰かが走る音が聞こえてきました。
まあ、ぼろマンションなのでたまに騒いだりする人やどんちゃんやる人もいますので「うるさいなー」ぐらいの気持ちで寝ようとしてました。
ですがその後もずっと廊下をダッシュしてる音が聞こえます。

どうやら私の部屋の前にダッシュで戻って来ては、あっちの方へ走っていっているような音がします。
我慢も限界に達しイラっと来たので、ドアを開けて注意しようと思いました。

ドアを開けた瞬間、やばい事したなと冷静な判断が出来たような気がします。
廊下には赤いスカート、マンションの中なのに傘をさし、汚いスニーカーを履いてる身長150センチぐらいの中年女がもの凄い勢いでダッシュしていました。

僕がドアを開けるとダッシュを止め、ニヤッと笑いながら、こっちへ向けて歩いてきました。
当然に僕はドアを閉めて、鍵とチェーンをしました。
そこで気づいたのですが、こんだけダッシュをしていたら一緒の階にいるサラリーマンとかおっさんとかが怒鳴らない訳はありません。
皆、この事を知っていたのかもしれません。

ドアのガチャガチャが開始されました。
警察かな?と思いましたが、とりあえず部屋の奥の方に行くとドアガチャが止みました。
しばらく沈黙が続き、諦めて帰ったかな…と思った次の瞬間、曇りガラスの窓に女のシルエット、開けてた小窓からは手のようなものがガサガサ出入りしました。

私は即座に玄関の方へ走ってチェーンと鍵を開け、1階まで今度は自分がダッシュで行きました。
そして同じ学部の奴の部屋のチャイムをピンポンピンポンと連続で押しました。
すぐに開けてくれましたので、僕が「とりあえず入れて」と言うと部屋に迎え入れてくれました。

今しがた体験した事を話すと、とりあえず危なそうなので応援を呼ぶか、とそいつの友達を3人呼んでくれました。
10分ぐらいで来てくれたので、5人で私の部屋に行くと、部屋のどこも変化はありません。

あいつ誰やったんやろなー、みたいな事を話していると、新しく来てくれた人の1人が小窓に気づき
「ここに手を入れられたん?」
と聞いてきたので、僕が
「そうです」
と答えました。

よく考えると、端部屋の4階、足場など無い壁にある窓です。
ワイヤー等で吊り上げないと、女のシルエットが見える訳ありません。

「え?」と思って小窓を見ると、泥みたいな指型が付いていました。
私はその日のうちに原付を貸してもらって実家へ帰り、部屋は解約しました。

私の体験はこれで終わりです。
落ちも何もないのですが、Oの南の方にある4階建てのマンションでの話です。

スポンサーリンク

TOP