恐怖の泉

実話系・怖い話「先祖の怒り」

私が小学生の頃、祖父母と両親、妹弟の7人で暮らしていました。
ある日、68歳になる祖母が体の不調を訴えて病院に行くとガンと宣告され、突然の闘病生活が始まりました。

しかし年齢的にも病気へ抵抗する体力がなかったのか、また発見された時には末期に近い状態というのもあり、ガンの痛みに苦しみながら亡くなりました。

亡くなる前に祖母は
「自分が死んだら必ずお墓参りに定期的に来てくれ、でないと寂しい」
と毎日口にしていました。

最後の方は酸素マスクをつけていたのであまり喋れなかったのですが、そんな状態でもそのことを私達に訴えていました。
病気で苦しそうな祖母がいたたまれず、皆が「必ず行くよ」と返事をしていました。
祖母の最後の光景は今でも目に焼き付いています。一つ大きく息を吸った後、二度と動くことはありませんでした。

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祖母が亡くなってから、何年かは言われていた通り年に数回はお墓参りをし、お墓の掃除などもこまめにしていました。
しかし十数年経つと、私や妹弟は家を出て東京で1人暮らしをするようになりました。祖父は亡くなりましたし、両親も仕事で大きな変化があったので毎日忙しく、祖母のお墓参りはお盆のみに行って簡単に済ませるようになっていました。
記憶は定かではないのですが、お墓参りに行かない年もあったかもしれません。

そんな状態だったので、次に家族全員が集まった時にはお墓参りをきちんとしないとね、なんて話していた矢先のことでした。

ある夜、ふと目が覚めました。
すると自分の顔の隣に誰かが立っていることに気付いたのです。

私は一人暮らしでしたので誰かが部屋の中にいるはずもなく、びっくりして体を起こそうとしましたが、手足がまるで動きません。
霊感など無く金縛りも初めてでしたが、体が何かに押さえつけられたかのようにビタッと動くことができません。
声を出すことも出来ず、息をするのさえ苦しいのです。

恐怖を感じながらかろうじて動く視線だけを向けると…私の枕の横に立っているのは祖母だとわかりました。

祖母の姿は透けているようではっきり見えませんでした。
私を真上から見下ろす祖母の表情は暗く、悲しそうでした。
何かを言いたそうにしていましたが、私は体が動かない恐怖でそれどころではありません。
祖母と見つめ合っていた時間は1時間くらいにも感じられました。

ハッと気がつくと祖母の姿は消えて朝になっており、体は元通り動くようになっていたのです。

昨夜の金縛りのことを家族に伝えようと、1番歳の近い妹に電話しました。すると妹は病院にいると言っていました。
どこか悪いのかと訊いたところ、朝通勤中に事故へ遭って病院に搬送されたというのです。
幸いにも私と電話できるくらいの軽い事故だったそうですが、しばらくは入院になるとのことでした。
そして私が昨夜の金縛りのことを伝えると…なんと妹も枕元に立つ祖母の夢を見たというのです。
私と妹は全身に鳥肌が立って、お互いに押し黙ってしまいました。

なんだか嫌な予感がして、両親や弟にも連絡をとりました。
しかし家族で霊感のある人などいませんので、誰も私たちの話を真剣に取り合いませんでした。

それから数ヶ月のうち、家族全員の枕元へ祖母が立って不幸が起こりました。
母と弟も車で事故に遭い、父は体調不調となりました。
本当に不幸中の幸いで死ぬような事はありませんでしたが、母の事故は特にひどく、車はぺちゃんこに潰れて廃車となりました。

あまりに続いた不幸に、ようやく家族全員が
「これはもしかしたら祖母だけでなく、先祖をないがしろにしたことへの罰かもしれない」
と思うようになりました。
特に母は、枕元に出てきた祖母へ「だって忙しいんですから」と反論してしまったらしく、青ざめていました。

この件以来、家族全員が年に数回はお墓参りへ行くことにしました。
その後は祖母が枕元に立つことも、家族に不幸がふりかかることも無くなりました。

私達家族は信心深い方ではありませんでしたが、やはり先祖を敬い気にかける心や行動だったり、忙しくとも家族が集まる機会を持つ大切さを感じた出来事でした。

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