恐怖の泉

実話系・怖い話「隣の男」

その日は飲み会が行われるため、とある居酒屋で待ち合わせることになりました。
会社が終わり、居酒屋に行くと自分が一番で、他には誰も来ていませんでした。
店員に後からまだ人が来ることを告げ、店内に先に入って待たせてもらうことになりました。

しばらくすると、Kくんが到着しました。
Kくんは大学時代に同じサークルに所属していた友人です。

「久しぶり、元気にしていた?」

久しぶりの再会に花が咲きます。
Kくんと会うのはおそらく5年ぶりになろうかと思いますが、当時と変わらず、パワフルで若々しい感じでした。

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次に来たのはNさん。Nさんは中学時代の同級生で、当時はよく一緒に遊んだ、当時の一番の親友でした。
成人後はあまり会う機会はなくなり、結婚後は年賀状で近況を報告するぐらいで、直接話をするのは10年ぶりぐらいでしょうか。
その後も、次々と知り合いが訪れます。

でも、各人同士は自分の知り合いという共通点を除けば、特別な接点がないので違和感を感じます。
今日は自分にとって何か特別な日だっけ?
幹事が何かのサンプライズを企画してくれているのだろうか?

そのうち、自分の隣に小太りでとても疲れ果てた顔をしている男性が座っていることに気がつきました。
確かに知っている人です、ただ、どうしても名前が思い出せません。
自分の何かのお祝いをしに駆けつけてくれている人に、名前を尋ねることは失礼だと思い、直接話かける勇気もありませんでした。

そうしているうちに、その男性がおもむろに声をかけてきました。
「この後、ご一緒にどうですか?とてもお酒が美味しいお店を知ってるんです。」
「先に、XXさんも行って待てるんですよ、きっと気に入ると思いますよ。」

その言葉を聞いて、何故かとてもそのお店に行きたくなりました。
理由はわかりませんが、とにかく一緒に行きたくて仕方がないのです。
「わかりました、是非、ご一緒、、、」
と言った瞬間、反対側の席から突然腕を強く掴まれました。
振り向くと、そこには自分の最もよく知る人物がいました。

妻でした。

妻は首を激しく横に振っています、その人と一緒に行ってはいけない、と言わんばかりに。
え?何故、妻が飲み会にいるんだ?

そこで目が覚めました。病院のベットの上でした。
そして、全ての状況を思い出しました。

自分は重い病の治療のため、長時間にも及ぶ大手術を受けたのです。病室の傍らには妻がいました、そして思いました。

もし、あの男についていったらどうなっていたのだろうか?

のちに、夢に出たその男が誰だったのかわかりました。前の会社の上司だったのです。
彼は自分が退職した数年後に、過剰労働で心身ともに疲れ果てたのか、自ら命を絶っていたのだそうです。

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