恐怖の泉

実話系・怖い話「誰の返事?」

これは私が小学校5年生だった時の話です。

私には妹がいて、当時小学3年生でした。
仲良し姉妹の私たちは、学校が終わるとたいてい2人で家の前で遊んでいました。
その日も2人でバトミントンをしていたのです。

時期的に蚊が多くて、ふと虫よけスプレーをしていないことに気がついた私たちは、家に戻って玄関から
「ママ、虫よけスプレー持っていくね!」
と声を掛けました。
すると玄関横のトイレから
「いいよー」
と声が聞こえたので、何の違和感もなく虫よけスプレーを取って再び遊び始めました。

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それから約10分後、ママが車で帰ってきました。
しかしさっき家の中のトイレから返事があったので、ママが車で帰ってくるはずがありません。
一気に鳥肌が立った私達2人は、血相を変えてママのもとに駆け寄りました。

事情を説明すると「何言ってるの」とあきれられましたが、確かに私たちは2人で同時にトイレの中から誰かの声を聞いたのです。
何の変哲もない自分の家のトイレが、一気に怖い場所へ変貌しました。

すぐに3人でトイレに行って中を確認しましたが、誰もいません。
妹と何度も確認しましたが、ちゃんと「いいよー」とはっきり言ったはずだと認識は一致していました。
恐怖からトイレには常に2人で一緒に行くという日々が続いていましたが、日々の生活でだんだんとその恐怖も薄れていきました。

半年ほどたった頃でしょうか。
2人で留守番をしていると、妹がトイレに立ちました。
私はテレビを見てリラックスしていると、妹が青ざめた顔をして戻ってきました。

「お姉ちゃん、トイレのカギがかかってるよ!」

慌てて走ってきたようで、妹はドアの角に体をぶつけたようです。
右肩をかばうように左手で押さえながら、震える声で妹が言いました。目はうるんでいました。

いつもは怖がりの私ですが、妹と2人しかいないこの状況と、妹かおびえている姿を見て奮起し
「大丈夫、行こう。」
とはっきり言って、トイレへ向かいました。

ドアノブを回そうとすると、確かに鍵が掛かっています。
家のトイレの鍵なので、簡単に解除することは可能でしたので、2人で何とかしてドアを開けました。
やはり中には誰もいません。

ドキドキしながら2人で立ち尽くしていると、玄関から声が聞こえました。
「ただいまー」
それはママの声でした。

よかった、ママが帰ってきた。
今日のこともすぐに話さなければ。
2人で「おかえり!」と勢いよく玄関に飛び出しました。

しかしママの姿はどこにもありません。

また出たんだ。そう思いました。
私たちはとうとう泣き始めました。

どちらか1人が聞いただけなら、気のせいだったと言えたでしょう。
しかし私たちは2人とも、同じ時間に同じ声を聞いたのです。
もう家にいられなかった私たちは、近くの公園に行って友達にこのことを話しました。
信じてくれる人は1人もいませんでしたが、話していて自分でも怖くなり鳥肌が止まりませんでした。

ひたすらママの帰りを駐車場で待ちました。
車が到着すると急いで駆け寄り、2人で競うようにこの話をしました。
するとママから思いもよらない話が返ってきました。

実は今までもトイレで物音がしたり、鍵がかかってしまったりしたことはあったが、子供たちを怖がらせたくなかったので黙っていたというのです。

その出来事の後、妹はたびたび金縛りに苦しめられることになりました。
私は妹に比べて、そういったものを感じ取る力が弱かったのか、それとも最初からターゲットが妹だったのかはわかりません。
妹によると、黒い塊が複数見えるということでした。

今では私達姉妹は結婚して家を出ました。
妹は自分の家を建ててそこに暮らし始めてからは、金縛りにあうことがなくなったそうです。

あの時の声が頭の中から離れず、今でも時々思い出しては鳥肌が立ちます。

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