恐怖の泉

実話系・怖い話「手頃なアパート」

僕は無事受験に合格し春から県外の大学へ通うという事で、地元から離れてアパートに一人暮らしをすることにしました。
その時は口うるさい親元を離れて暮らすということに心から胸が踊り、どんな暮らしになるのか待ち遠しかったです。

アパートを選ぶ時、とにかく安く住みたい!遊びにお金をかけたい!という思いから、特に何も考えず手頃そうなところに新居を決めました。
荷物を運ぶ前日、改めて物件の情報を確認して「狭いかな…」と感じましたが、安いし一人だからまぁ良いかなと、実際に部屋を確認しなかったのも失敗だったのだと回想しています。

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そして引越し当日。
新居に足を踏み入れた瞬間、異変を感じました。
全身に鳥肌がゾッと立ったのを覚えています。

明らかに何かある…そう思わせる雰囲気が、部屋に充満しているような気がしました。

ですが引越し初日に部屋を変えるなんて言えません。親に心配や迷惑をかけることはできませんでした。
夜には母さんが心配して電話を寄越してくれました。

母さんは案の定、僕がいなくて悲しいと嘆いて僕はなだめる立場に回っていました。
しばらく話し込んでいると、途中で母さんの声が途切れ途切れになるなどノイズが入りました。
電波が悪いのかと画面を確認しましたがアンテナは立っています。むしろ都会に来たので電波は良いはずでした。
不思議に思うもそのまま会話を続け、これからの予定やお盆には帰ることを母さんに伝えました。

その時、一瞬部屋の電気が消えました。

何の前触れもなく部屋の電気が消えたので少し動揺しましたが、数秒後には明かりが付き元の明るさになりました。
動揺した声は母さんにも伝わりどうしたのと心配してくれましたが、何でもないと伝え電話を切りました。
何か不穏な空気に身震いしましたが、その日は何も考えずに寝る事に集中しました。

それからというもの、部屋では不思議なことが起こり続けました。
部屋で電話するときはノイズが入るのは当たり前。不気味な物音も毎日聞こえてきます。
気持ちも落ち着かないと言いますか、悲しく落ち込んだような気分になるのです。
次第に寝つきも悪くなり、悪夢を見ることも増えていきました。
詳しい内容はあまり覚えてないのですが、40代くらいの知らない男性が出てきたことだけは覚えています。

新生活が始まって1ヶ月。
大学に通う事には徐々に慣れてきましたが、家に帰るといつも緊張感が走っていました。
もはや大学にいた方が落ち着くというくらいでした。

これはいけないと思った僕は、ある日部屋の掃除をしようと窓を全開に開け放ちました。
恥ずかしながら掃除が苦手な僕は、アパートへ引っ越してから一度も掃除を行わずそのまま暮らしていました。
それが良くないのだと感じたので、心機一転大掃除をしようと張り切り、部屋を隅から隅まで綺麗にしようと意気込みました。

まずはダンボールに入ったままの荷物を片付けようと、初めて押入れの戸に手をかけそっと開けた時…
僕はその場から動けなくなりました。

押入れの中にはお札が無造作に大量に貼ってあって、その上から赤い文字で何か書かれていました。
その後の事は、あまり覚えていません。

のちに知った話によると、以前住んでいた住民の中に自殺者がいて、あの部屋は出る部屋となっていたそうです。
亡くなったのは40代の男性だそうで、ひょっとしたら僕の夢の中に出てきた男性と一致していたのかもしれません。

彼は僕の夢の中に出てきて何を伝えたかったのでしょうか。
びっしりと貼られたお札は何を意味していたのか、亡くなった男性はどんな気持ちだったのか。

あの部屋にはもう住んでいませんが、電話をしていてノイズが走るたびに押入れの光景を思い出し、嫌な汗が出てきます。

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