恐怖の泉

人間の怖い話「訪ねてくる男」

高校を卒業した私は、県外の専門学校へ通うこととなりました。
初めての一人暮らしでしたが…そこで恐ろしい出来事に見舞われてしまいました。

引越し先のマンションは、母親と入念に下見をして決めました。
自分で言うのもなんですが、箱入り娘として育てられたため心配性の母は
「学校から近くて、通学路も人目につきやすいところで…」
と、呆れる程の過保護っぷり。
私自身も不安な気持ちが無いわけではありませんでしたが、それよりも自由になれる楽しみが勝っていました。その時までは…。

数日後、テレビの配達が来ました。
それほど大きくはないテレビでしたので、男の配達員の方が1人で私の部屋まで運びに来ました。
そして運び込まれたテレビを見て気づきます。

(あれ?テレビってどうやってつけるのかな…。)

恥ずかしい話ですが、テレビの配線などやったこともありません(今でもわかりませんが)。
その心の声が聞こえたのか、配達員の方が
「設置しましょうか?」
と声をかけてくれたので、私はありがたく家へあげてお願いしました。

慣れた手つきであっという間にテレビの設置は完了。
私は思わず
「すごい!すごい!ありがとう!!」
と大喜びをし、配達員の方に感謝しました。

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そして次の日。
ピンポーン
インターホンが鳴ってドアスコープを覗き込むと、テレビを配達してくれた方がドアの前にいました。

(え?なんで来たの?)

恐怖を感じた私は、無視して居留守を使いました。
しかしそれからというもの、男は毎日私の部屋を訪ねるようになったのです。
もう本当に怖くて無視し続けたのですが、ピンポンを押さなくともドアの前に男がいるのがわかります。
男も私へ
「いるの分かってるよ~」
と言って居留守であることはバレていましたが、それでも無視するしかありません。

とある日なんかは、静かになったのでもう帰ったかな…と思って恐る恐るドアスコープを覗きに行こうとすると

「あ、今ドア開けた~?」

と男の声が聞こえて来ました。
どうやらドアスコープから、部屋の中を覗き込んでいたようです。
恐怖で私はその場から動けなくなってしまいました。

それからは専門学校で出来た友人の家へお邪魔するようになりました。
どうしても家へ帰る場合は友達に一緒に来てもらうようにし、下手な行動をすると何をされるか分からないのでとにかく無視をし続けました。
男は無視を続けたことで諦めたのか、しばらくしたら来なくなりました。

友達からよく言われるのですが、私はオーバーリアクションと言いますか、ちょっとした事でもすごく感激したように反応してしまいます。
今回の場合はその反応に男の人が勘違いをしてしまったのでしょう。
また、業者の方とはいえ男の人を若い女性が一人暮らししている部屋へ上げてしまったのも、今思えば不用心な行為だったのかもしれません。

そういえば、あまりにも私の反応が良かったせいか、男の方がテレビを設置している時に
「オレたち付き合ったら、いい感じじゃない?付き合おうか?」
と言っていたことを思い出しました…。

どうか一人暮らしの女性は、くれぐれも言動にはご注意下さい。

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