恐怖の泉

実話系・怖い話「背後の気配」

これは私が学生時代だった頃の話です。当時、私は海の近くの女子寮に住んでいました。

その時私には遠距離恋愛中の彼氏がいました。
地元が一緒だったのですが、進学を機に私が地元を離れることになりました。
それまでもちょっと束縛が強いなとは思っていましたが、遠距離恋愛が始まるとますます頻繁に連絡を欲しがるようになりました。

朝起きてすぐに電話。学校でも休み時間には連絡をいれ、帰りは電話しながら帰るということを半義務化されていました。
初めのうちはきっと寂しいんだと彼の要望に応えるようにしていましたが、次第に連絡を取るのが億劫になり、新しい友達と過ごす時間の方を優先するようになりました。
もちろん彼は激怒し、わたしを説教するためにわざわざ会いに来るなどエスカレート。
そんな彼に嫌気が差した私は、もういつ別れようかそんなことばかり考えるようになりました。

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ある晩、私は彼と携帯で話をしながら寝てしまいます。
気が付いてふと目を覚ますと、枕元には通話中になっているままの携帯や、もう見慣れた部屋の壁やテレビなんかがありました。
私は彼にもう寝るから、と告げようと携帯に手を伸ばそうとしましたが、全く身体が動きません。
あれ?っと思っていると、背後に何かの気配を感じました。

背後にいる何かは呼吸をしているようで、耳元に生暖かい風が当たります。直感的に「男性だ」と思いました。
私は怖くてぎゅっと目を閉じました。

いつの間にやら外が明るくなっていて、朝がきていました。
しかしその日から頻繁に、夜中に同じような人の気配を感じるようになりました。
そしてその気配は、日に日にわたしの首へと手を伸ばしているような気がするのです。
もう夜が怖くて不眠になり、寝る時は座って部屋を明るくして仮眠をとる、そんな生活が何日か続きました。

この体験を学校の男友達に相談したところ、どういうわけだか告白され付き合って欲しいと言われました。
わたしもその友人が気になっていたのでとても嬉しく、その勢いで地元の彼氏に別れを告げ、友人と付き合うことにしました。
沈んだ日々の中で思いがけず嬉しい出来事に合い気持ちが切り替わったのか、それから人の気配を感じる頻度は次第に減っていきました。

地元の彼氏に別れを告げてから1週間が過ぎようとしていた晩でした。

背後にいたはずの男性の気配が私へ覆いかぶさり、頭を手で強く押さえつけてきました。
はっきりと手だと分かるし触れもするのに、何故かその相手を見ることができません。
私は必死に抵抗し、どうにか手から逃れて部屋の中を逃げ回りました。
肉眼で姿は分かりませんが、テーブルを挟んだ向こう側に確かに気配を感じたので携帯を手に取りました。開いた携帯はなぜか、カメラモードになっていました。

携帯越しの画面には私の部屋が映っていて、テーブルの向こう側には別れた彼氏の姿がありました。

私は思わずシャッターを押しました。
すると画面の中の彼がテーブルをまたいで私の携帯を取り上げようとしてきます。
私はただひたすらシャッターを押しました。
ついに彼の手が携帯を奪い取ったところで目の前が真っ暗になり、気がつけばいつものベットで横になり朝を迎えていました。

恐る恐る携帯のフォトファイルを開いてみましたが…取ったはずの写真は1枚もなく、変わった写真もこれといってありませんでした。

あれが夢だったのか現実だったのか分かりませんが、その日を境に恐ろしい体験をすることは無くなりました。
もう長い間地元へ帰っていないので、元彼が今どこで何をしているか…私には聞く勇気がありません。

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