恐怖の泉

実話系・怖い話「私のところへ来たおじさん」

これは私が小学5年生の夏に体験した話です。

小学生のころ、私は両親と兄弟、祖父母と実家で暮らしていました。
40年前に建てたという家は古く、私の部屋にはクーラーがありませんでした。
私の部屋の隣にある両親の部屋にはクーラーが設置されており、両親の部屋のドアを開け放しておけば廊下をつたって冷気が少し届く、という状態でした。

ある夏の日、クーラーのない自室で過ごしていると足元がひんやりしたような気がしました。
廊下を通った母に
「今クーラーをつけているの?」
と聞きましたが
「つけていないわよ。」
との返事。
「なんかここ涼しくない?」
「涼しくないわよ。」
冷気を感じたのは私だけでした。
今思うとこれは予兆だったのかもしれません。

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その晩自室で寝ていた私は、午前2時ごろふと目が覚めました。
私の寝ていたベッドは窓際にあり、左側は窓、右側はドアがあって廊下、という配置でした。

なぜ起きてしまったんだろう…と思いつつふと左側の窓へ目をやると、暗くなって鏡のようになった窓に見知らぬ男性の顔が映っていたのです。

はっとしましたが体が動きません。
声も、なんと言ったらいいのかわからず出ないのです。
一度冷静になり、これはお父さんで今隣に立っているのかも、と思い必死に眼球だけ右に動かして廊下側を見ました。

誰もいません。

それでもここに顔が映っている理由を考えようとし、仕事に行っている最中にお父さんが亡くなってしまって最後に会いに来てくれたのかも…などと縁起でもないことも考えました。
しかし午前2時ですから、父はとっくに帰宅している時間です。しかももしそうなっていたら大騒ぎになっているはずです。

あれこれ考えている間も、依然として窓には中年男性の顔が映っています。

自分が怖くならないような理由をいろいろ考えました。
消えない顔。
考えているうちに、意識が遠のいて眠っていました。

翌朝8時ごろ目が覚めました。
窓からは朝日が差しています。
両親の部屋に行きましたが父がいません。
急いでリビングへ行くと、母と祖母が居て「おはよう」と言ってくれました。

私は思わず
「お父さん生きてる?」
と聞きました。
すると2人は笑って
「どうしたの?もう会社に行ったわよ。」
と教えてくれました。
私は昨晩の出来事を話しました。
すると2人は顔を見合わせ、こう言いました。

「昨日、はす向かいのおじさんが貯水池に入って亡くなったのよ。」

お顔を確認してみたところ、私が見たのはそのご近所のおじさんでした。
お会いしたことはない方でしたが、思わぬ形でお会いすることとなりました。
それにしても、なぜ私の元へと来たのでしょうか…今でもわかりません。

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