恐怖の泉

実話系・怖い話「廃墟のラブホテル」

私はスナックの送迎係をしています。
スナックのママから指示を受けて、旅館や駅などにお客様を迎えにいったり、スナックで働く女の子達を家まで送り届けることが仕事です。

そんな仕事を初めて半年がたった頃、あれは蒸し暑い夏の夜でした。
出勤前の私に、ママから連絡が入りました。

「今日から新しい子が入るから迎えに行ってくれる?場所は廃墟のラブホテル。分かるよね?」
「…!?廃墟のラブホテルですか?そこに住んでるんですか?」
「そうよ。本人がそこに住んでるって言ってるんだから間違いないわよ。よろしくね。」
「えっ…あっはい。わかりました。」

とりあえず電話を切り、分かりましたとは言ったものの、全くママの話が信じられませんでした。
何しろ廃墟のラブホテルです。
しかも潰れてから何十年も経過している、地元では有名な廃墟のラブホテルです。

とても人が住めるような所ではないし、まして女性が一人で…?

ママの電話を受けてから、なんだかその事が頭から離れず、何となくソワソワしてしまい嫌な予感がしました。
ですが私の性格上あまり気にしないようにして、ママの指示通り出勤前に廃墟のラブホテルへ寄ることにしました。

スポンサーリンク

出勤前といっても、もう日は暮れて辺りは暗くなっていました。
雑木林の中にラブホテルがあり、真っ暗な中で頼りになるのは車のヘッドライトのみ。
そして廃墟のラブホテルまでの道のりもうろ覚えのせいか、到着までにやけに時間がかかってしまいました。

やっとの事でなんとかたどり着くと、入り口が2つありました。両方にボロボロの赤いカーテンがかかっています。
どちらから入っていいか分からず、とりあえずカーテンが破けて車が入りやすそうな方から侵入しました。

その瞬間!ピカッと強い光に照らされました。
ドキッとして見ると、センサーで感知して光るライトでした。

「なんだよ。驚かすなよー!」
と一人言を言いながら、車をソロソロと進めて開けた場所で車を停めました。
そしてエンジンを切り、例の女の子が来るのを待っていたのですが…
なんだか嫌な感じがします。今まで霊なんて信じなかった私ですが…早くこの場から立ち去るべきだと直感で感じました。
冷や汗も全身にびっちょりです。

するといきなり、エンジンを停めているはずの車なのにスピードメーターの針が動きだし、180キロを指しました。
「ヤバイ!おかしい!ここにいてはダメだ!」
私は逃げ出したい気持ちでいっぱいです。
しかし仕事で来ている以上、女の子を乗せる前に逃げ出すわけにはいけません。

ふと助手席側に目をやりました。
すると、いつの間にか女の子が立っていました。
私は「助かった~」とホッと一安心。女の子に向かって

「いるならいるって言ってよ!全然気付かなかったじゃん!」

と言いながら、助手席の窓を開けました。
しかし、すぐ頭の中は真っ白になりました。

だって先程いたはずの女の子がいないんです。

私は一目散にエンジンをつけ、着た道を引き返しました。
「とにかく、逃げなければ…!」
その間も脂汗が吹き出し、足はガクガクと震えます。
震える足を押さえつけ、アクセルをベタ踏みし車を走らせました。

ようやく見慣れた景色に出た所で、まずママに電話し経緯を報告しました。
すると、ママもその子に何回電話をかけても繋がらないとのこと。
その後も連絡が付かず行方は分かっていません。

私が見たものは何だったのでしょうか…。冷静になった今でも、わかりません。
確かに窓を開ける前、女の子の姿が見えていたのですが…。

スピードメーターの針も、女の子の姿も、全て何かの見間違いであったと信じたいです。
そしてもう2度とあの廃墟のラブホテルには、近づかないでおこうと決めました。

ラブホテルには、様々な人の念がこもっていると言われています。皆さんもお気をつけて。

スポンサーリンク

TOP