恐怖の泉

実話系・怖い話「終わらない工事現場」

私の主人は建築系エンジニアなのですが、業界全体が不景気のせいもあり、失業して半年近くになります。
今までしてきた質素な生活と蓄えとで、当座の生活に心配はありませんが…気落ちからなかなか立ち直れない主人の姿を見るのは辛いです。

住んでいるのが田舎の地方都市と言うこともあり、再就職活動は難航を極めています。
それでも週に1件2件と、ぼつぼつ面接に呼ばれていますので悲観視は決してしていません。
主人はこれを機に、悪くしていた膝痛の治療にも通えていますし、私はじっと静かに彼を支えて動向を見守っています。

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先週も主人は隣町の企業へ面接にでかけて行きました。
お昼前には帰って来たので、温かい昼食を一緒に食べながら話を聞きました。
すると、食後のお茶を飲みふっと溜息をつきながら、主人がこう言うのです。

「前の企業で担当していた、○○ビルの改修工事現場の前を通りかかったんだよ。
今、×月だよね?もう3ヶ月も完了が遅れているってことだ。変だなぁ…。」

退職した企業の仕事ではありますが、自分が担当していただけに主人はその遅れが気になって仕方がない様子でした。

「外から見ただけだけど、どうも内装の方に問題があるんじゃないだろうか。」

それから数日後、主人が膝の治療のためにいつもの接骨院へ行くと、偶然にも前の会社で一緒に働いていた現場監督さんと待合で一緒になったというのです。

その監督さんと主人は何度も一緒に仕事をしてきました。
年齢は違うのですが割と気が合っていたそうです。
監督さんは長年の腰痛に悩んでいて治療のために来ていたのですが、そこで主人は妙な話を聞かされました。

例の、改修工事を請け負った○○ビルの工事現場は、主人が失業してからも監督さんが一貫して担当していました。
主人が来ていた頃までは、何の問題もなく作業は順調だったのですが…主人が外れて以来、妙な出来事が続くようになったのだそうです。

最初の異変は、内装の壁が文字通り「崩壊した」のだそうです。
ビル自体は築数十年とかなり古かったので、誰も不思議には思いませんでした。
傷んだ部分の壁を補強して工事は進行しましたが、今度は別の場所で配管ミスが起こっていたのです。さらには電気配線が焼き切れた…など、次々に小さな障害が起り、その度に工事は少しずつ遅れていきました。

とうとうシビレを切らした社長(かなりワンマンな人でした)が現場に乗りこみ、作業員の皆さんを叱咤しようとしていた時の事です。

梯子が倒れたような音がした、と何人かが言いました。
物音を聞いて作業員が駆けつけると、部分的に崩れ落ちた壁があり、倒れた梯子のすぐ脇で社長がのびていた…と言うのです。
さすがにエンジニア用のヘルメットをしていたので大事には至りませんでしたが、病院に担ぎ込まれた社長はしばらく絶対安静を言い渡されました。

意識を取り戻した社長は
「梯子?あれは倒れた梯子なんかじゃない!誰かが、私の頭と背中を背後から殴りつけてきたんだよ!」
とわめいてやまないのだそうです。
結局警察が呼ばれて現場が調べられたのですが、状況はわからないままでした。

こうして工事は延びに延び、今に至っているそうなのです。
監督さんは、こんなことを言っていたそうです。

「あの現場ビルなぁ、お前に改修して欲しかったんだよ、きっと。だからお前をクビにした社長に仕返ししたし、今でも何かしらのトラブルを起こし続けている。
ビルの復讐なんて聞いたことないが…俺にはそんな気がしてならないよ…。」

主人はそのビルに因縁もゆかりもないので、いまだに頭をひねってばかりいます。
建物に魂や意思が宿る。そんなこと、あるものなのでしょうか。

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