恐怖の泉

実話系・怖い話「夜間せん妄の幻覚」

私はとある病院に勤めています。
これは、その病院に就職してまだ2~3年くらいの時の話です。

その病院は増築を繰り返しており、古い建物と新しい建物が繋がってできていました。
その中でも私は一番古い建物の病棟に配属されていました。
その病院には様々な方が入院されてきましたが、やはり多いのは高齢者です。
転んで骨を折ったとか、脳梗塞になったなど理由は多様ですが、ほぼ高齢者でベッドが埋まっている状態でした。

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突然ですが「夜間せん妄」って知っていますか?

夜間せん妄は簡単に言うと、夜に意識がもうろうとして幻覚や錯覚がみられる状態のことです。
多くは認知症の高齢者にでる症状で、人によりその状態も様々です。体調次第で一時的に症状が出てしまう方もいます。

私の勤める病院に入院しているのは体調の悪い高齢者。もちろん認知症の方も大勢いるわけで…。
そうなると、必然的に夜間せん妄の方がでてきます。

「おーい。おーい。誰かー…」

誰が呼んでいるか分かっていても、薄暗い廊下に響く声はちょっと怖いです。
だいたいこういう場合に幻覚が見えていると、その方も怖いのでしょう。
よく「誰かそこにいる」とか「あの黒いのは何?」とか、自分が見たものを訴えてきます。
これは幻覚を見てるんだ!ということがわかっていても、「ほら、そこにいる」とか言われるとめちゃくちゃ怖いです。実際は全く何も見えなにのに、人間の脳って不思議です。

ある時など、ふらふらと病室からでてきたおばあちゃんに「どうしたの?」と尋ねてみると
「窓ガラスにたくさん生首がいたのよ~」
と、淡々と報告されました。
ぼんやりした状態でも、テンションは普段と変わりません。普通そんなもの見たらもっと慌てるでしょうに。
これでその窓ガラスの向こうには墓地が…とかオチがあれば本物でしょうが、残念ながらあるのはまったく普通の民家。
びびりながらも一緒に窓ガラスを確認して、そのおばあちゃんも見間違いと納得されていました。

こういったケースなら「この人幻覚見ちゃったんだな」と思うところなのですが、ある病室に入院する方の幻覚症状は少し違ったのです。

その病室に入院する方々は、病名も性別もバラバラ。
確かに高齢者であることに変わりはないのですが、認知症ではない方も同じ「幻覚」の話をするのです。
その「幻覚」とは、女性がふと気が付くとドア付近に立っているというものでした。

「はっきりとは見えなかったがあれは誰か?夜に誰かきたのか?」
と、その病室の方によく聞かれました。

これだけ同じ目撃証言があると、これは「幻覚」ではなく「本物」ではないかと思ってしまいます。
そこで先輩職員になぜその病室だけ同じような目撃証言があるのか聞いてみたのですが、原因ははっきりしませんでした。

「この病院古いし、どの部屋でも亡くなってる人いるし。原因なんてわかんない」
と、ほんのり怖いことをさらっと言われてしまいました。
ところがその後、他の先輩に聞いてみると
「その女の人、確かにたまに見るわ」
との衝撃発言が返ってきました。
私は思わず
「やっぱりあれは本物ですか!?てか見えてたんですか!?教えてくださいよ!」
と詰め寄ってしまいましたが、その先輩職員曰く
「何かするわけでもないし、仕事には差し支えないでしょ」
とベテランならではの頼もしい返答がかえってきました。

それからしばらくは夜の病棟を歩くときが怖くて仕方ありませんでしたが、結局私に霊感は無いのか見ることはありませんでした。
そのうち「確かに仕事に支障はない」ことを理解して、慣れって怖いなと思ったものです。

その後病院の建物があまりに古いので、建て直して新しくなりました。
すると、入院している方からその女の人の話はぱったりと聞かなくなりました。
ふと会話のネタで先輩職員に
「そういえば、あの女の人の話聞かなくなりましたね」
と言うと
「確かにね。まぁ今度は病室にはいないからじゃない」
とのお答えが。
場所は教えてくれませんでしたが、どうやら今はあまり目立たない場所にいらっしゃるようです…。

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