実話系・怖い話「噂の空き家」
高校のビックイベントである夏の体育祭が無事に終わり、高校3年最後の思い出作りにとクラスで肝試しをすることになりました。
私が住んでいた町には、幽霊が出ると噂されている空き家があります。
昔、強盗によって惨殺された家の住人が夜になると現れるというのです。
その家を肝試しの舞台に決め、深夜にクラスメイトがそこに集まることになりました。
しかし実際にその家が事件のあった場所だという確信はなく、そこで幽霊を見たという人に出会ったこともありません。
私はというと全く噂を信じていない側で、少し変わった洋風な作りであることや、利便性の関係から長い間空き家になってしまったことで、根も葉もない噂がささやかれるようになったのだと思っていました。
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深夜、指定された時間にクラスメイトがその空き家の前に集まりました。
家はさほど大きくなく、白いペンキが所々はがれてくすんだり、さびたりしていました。
住宅街の外れに佇むその家はすっかり荒れ果てていて、窓ガラスはほこりをかぶって白くなっていました。
クラスメイトの中には、怖がっていたり門限が厳しかったりと来られない子もいたので、集まったのはほんの数人でした。
しかし深夜にそこまで出かけることに私たちは興奮していて、それほど怖いとは思っていませんでした。
むしろ面白がりながら家の周りを歩いたり、中を覗いたりしました。
荒れている部分はあるものの、その家は普通の空き家という感じで特に変わったところはなく、事件のあった形跡も見つけることができませんでした。
思い思いに調査をしても何も起きる気配がなかったため、私たちは一番近くに住むクラスメイトの家へ行き、皆でお茶やお菓子を食べながら少しおしゃべりすると、それぞれ自分の家へと帰っていきました。
私も適当なところで、家が同じ方向の女友達と帰宅しました。
しかしその帰り道で、とても怖い思いをすることになったのです。
帰り道は私を含めて4人で、他愛もないことを話ながら横一列に並んで歩いていました。私はちょうど右端を歩いていました。
そのときに話していたのは、もっぱら好きな人の話。クラスの誰と誰が付き合っているとか、好きな人の話をしていました。
「○○君はきっとアナタのことが気になっていると思うよ。」
そう友人に言われ、わたしは「やだー」っとかぶりをふりながら、ふと足下を見ました。
私は自分が一番右端にいたと思っていたのですが、私の右側にさらにもう一人、誰かが歩いているのです。
いつの間にか4人だったはずが5人になっていました。
急な出来事にパニックになりつつも、私は自分のすぐ右側にいる気配に意識を集中しました。
確かに私の隣を誰かが歩いていて、私たちの会話に混じっているのです。怖くて右側を見ることはできません。
そしてその何者かが
「ねぇ」
と私に声をかけてきた瞬間、私は耐えきれず走って逃げ出してしまいました。
急に走り出した私に驚いた友人らが追いついたときには、その何者かの陰は消え、人数も4人に戻っていました。
何度も思い違いだったのではと思い返してみました。しかしあの瞬間、絶対に私たち4人以外の何者かが横を歩いていました。
その気配は鮮明で、私に話しかけた声もハッキリと覚えています。
その後、高校を卒業して何年も経過した同窓会の席で、私以外にもあの肝試しへ行ったメンバーが変な体験をしたという話を聞きました。
きっとあの空き家へ肝試しを行ったことで、何かを連れて帰ってきてしまったのだと思います。
あの空き家で起こった事件の被害者なのか、それとも別の何者かだったのか。今だにわかりませんが、それ以来あの空き家の近くには近寄っていません。
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