恐怖の泉

実話系・怖い話「浮かぶ首」

その日は飼い犬が夜中に急に鳴き出したために、近所迷惑を考えて散歩に連れ出すことにしました。時間は十二時過ぎごろだったと思います。

大型犬ととぼとぼと街灯の照らす中を散歩中、一軒の古い店舗兼住宅の向かいを通りがかりました。
そこの建物の隣は堅気じゃない職業の方の持ち物だったため、少々ガラの悪い男女が出入りすることがあり、なるべく近づかないようにしていたんです。

そのためめったに通ることもなかったんですが、その日はあいにく犬に引っ張られるままその道に入ってしまったのです。
その建物は私が子供のころからあり、戦後のどさくさに建てられた建物をそのまま残してあるためとても古く、人が住めるような建物には見えませんでした。

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実際その日も室内に明かりはなく、完全に無人といった感じでした。しかし、よく見ると窓のところにふわふわと何か楕円形の物が浮かんでいるのが見えました。
小さな野球のボールほどのその塊は上下左右にランダムに動いていましたが、まるでこちらが気付いたのに反応するようにそこでぴたりと動きを止めたのです。

動きがなくなったことではっきりその形を確認することができたのですが、その塊だと思ったものには目鼻がついていて、にやりとこちらを向いて笑っていたのが見えました。

そのあとは犬を引きずって一目散に家に逃げ帰ったので、あれが本当は何物だったかは知りません。
ただあとから聞いたのは、その家で不審死した人間が過去にいたということで、いくら人が住んでもすぐ引っ越してしまい、今では住む人もなく放置されているとのことでした。

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