恐怖の泉

怖い昔話「首のない影」

月の光が眩しい夜道を歩いていた男が、ふと自分の影を見てみた。すると首から上がなくなっているではないか。
「これは一体どういうことだ!?」
男は急いで、町で評判の占い師に相談をした。

その占い師は男に言う
「お前さんには死相が出ておる。このままでは数日後に、命を落とすことになるだろう。」
あまりに突然の宣告に男は戸惑った。
「そりゃあ本当ですかい?!なんだってオイラが死ぬ羽目になっちまうんだ…。なんとかすることは出来ないのですかい?」
すると占い師は男にこう告げる。
「お前さんの一番大切なものを弓で射れば、助かるだろう。」

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家に帰った男は、自分が一番大切なものは何か考えていた。真っ先に頭へ浮かんだのは、女房の笑顔だった。
「自分はまだ死にたくない。だからといって、女房を射れというのか…。」
悩みに悩んだ挙句、男は苦渋の決断で女房を射る決意をする。
その日の夜、男は一睡も出来ずに女房と暮らした日々を思い返し、涙した。

そして翌日。いつもと変わらず家事をこなす女房を横目に、男は弓の準備を進める。
「女房よ、許しておくれ…。」
心を鬼にした男は弓の弦を張り、矢を放った。

「ギャー!」

女房を射ると、矢は彼女とその後ろにあった長持を射抜いた。
女房は絶命したが、不思議なことに長持には見知らぬ男が隠れていて、その男も息絶えていた。

その後、その見知らぬ男は女房の間男であったことがわかった。
男が弓を射らなければ、その日の夜に女房と間男が男を殺す計画を立てていたのだった。
こうして男は占い師の助言通り、事なきを得た。

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