実話系・怖い話「深夜のコンビニでの出来事」
この前の深夜、タバコが切れたのでコンビニまで買いに行く事にした。
翌日にしたらいいじゃないかと思うかもしれないが、頭脳労働に甘いものとタバコは欠かせないのだ。
夏と言えど夜ともなればシャツ一枚では肌寒く、適当な上着を羽織って外に出た。
三日月がうすぼんやりと空に浮かび、なんとなく楽しくなっていた。
特に何事も起こらずにコンビニに到着し、タバコの他にチョコレートやジュースの類を物色していると、店内へ慌ただしく駆け込んでくる青年が居た。
彼は何やら青ざめた顔をして、店員に塩をくれと言っていた。
ちょっと興味が湧いたが、話しかけるのもどうかと思ったので、横目で様子を伺いつつレジに商品を置いた。
近くで見てみると、青年の服のあちこちに泥汚れが見える。
ただの跳ねに見えないことも無いが、見ようによっては小さな手形にも見える。
ぶるぶる震えながら、店員にお祓いしてくれる神社は無いかと訊ねていたが、いくらコンビニの店員でもそんな物知らんだろう。
呪われる、どうしようと言いながら喫茶スペースで伯○の塩を抱えていた。
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この辺りに心霊スポットなんかあったかなと、店員に訊いてみると、いつからか公園近くのゴミ集積所に何か出ると言う噂があるらしい。
青年を見るとそれだと言わんばかりに首を縦に振っている。
結局好奇心に勝てず、青年にコーヒーをおごりつつ話を聞くと、市松人形に襲われたと言い張る。
ゴミバケツの上に高価そうな人形が置いてあって、それを持って帰ろうとすると小さな手でバチバチと叩いて来るそうだ。
人形が動くなんて、可愛いじゃないか。
是非とも見てみたくなり、青年に詳しい場所を聞き出し、その足で件のゴミ捨て場に向かう事にした。
ワクワクしながら探したが、それらしい物は見つからず、しばらくウロウロしたが何もなかった。
諦めて帰ろうと踵を返すと、不意にコンビニ袋が重たくなった。市松人形来たかと思い袋を見ると、おかっぱ頭で顔をくしゃくしゃにした赤ん坊のような物が、チェシャ猫のようにニタニタした表情で収まっていた。
全くもって可愛く無い。
驚きよりもむしろ、得体のしれない物が商品に触れた嫌悪感の方が勝る。そのまま袋を電信柱に叩きつけると何かが潰れる音がしてから、黒い液体が吹きだした。
缶コーヒー死亡のお知らせ。多分チョコもビチャビチャだろう、畜生め…。
袋を覗くと、いびつになった顔がまだある。嫌悪感から怒りに変わってそのまま何度か打ち付けると、ふと袋が軽くなった。
中にはもう何も居なくなっていた。
妙な達成感に包まれながら、唯一上着のポケットに入れて無事だったタバコに火をつけ一服すると、何かの鳴き声が遠くに消えていくのが聞こえた。
袋はつい捨ててきてしまった(普段はポイ捨て反対ですスイマセン)。
とりあえずコンビニに戻るとまだ青年が居たので、人形は居なかったが変なのに荷物を駄目にされたと愚痴ったら、驚いた様子でコーヒーとチョコレートを奢ってくれた。
動く人形、欲しかったな。
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