恐怖の泉

実話系・怖い話「もう一人のわたし」

わたしには強い霊感は無いらしく、これまでにこの世ならざるものを見たことはありません。
ですが妙な声を聞いたり、誰も居ないのに肩を叩かれたりといった経験はあるので、全く無いというわけではないのかもしれませんが…。

今回お話いたしますのは、母から聞いた話です。
母は昔から専業主婦の上、地元から離れた地域に住んでいるので友人もおらず、家に居る時間が非常に長いです。
家事もあまりしてはくれず…と、これは関係ありませんね。
ともかく、母は家で昼寝をしていることが昔から多いのです。

わたしがまだ小学校低学年だったその日も、寝室で眠っていたそうです。

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「お母さん」

わたしの声が聞こえ、母は目を覚ましたそうです。声のほうを見ると、寝室の入り口にわたしが立っていました。
しかし、何かがおかしい。そう感じたと言っていました。
具体的な違いはわかりませんが、しかし違和感がある。何かがおかしい。
そう思いながら、「どうしたの」と聞き返したのだそうです。

「遊びに行っても、いい?」
入り口に立ったまま、わたしはそう訊ねてきたのだそうです。これは不自然なことではありませんでした。
当時わたしは、学校から帰って遊びに行く時は必ず母にお伺いを立てねばなりませんでしたから。
けれど、やはり母には違和感があったそうです。

「別にいいけど…」

戸惑いを拭えぬままにそう返すと、わたしはスーッと寝室を後にしました。
何か不気味なものを感じながらも、母は深くは考えずにまた昼寝を再開したのだそうです。

さて、こうやって母の視点で書いている時点で察していらっしゃる方もいらしゃるでしょう。
そう。わたしには、こんな記憶は無いのです。
わたしがこの出来事を知ったのは、その日帰宅したときでした。

今でも覚えています。家に入り、いつものように寝室を覗いて母に「ただいまー」と声を掛けたところ、酷く驚いた様子で「もう帰ってきたの!?」と言われたのです。
しかし、別に学校が終わった時間が早かったわけではありません。不思議に思い訊ねると、母は前述の出来事を話してくれました。

「ドアの前でじーっと立って、『遊びに行っていい?』って訊いてきて…なんか、気味悪かった」
そう言われました。

遊びに行く許可を得るときは、わたしは必ず笑顔を作っていたんです。母の機嫌を損ねたら、許可が下りませんでしたから(笑)
ですが…その時のわたし?らしき人物は、笑みを浮かべるどころか不気味な雰囲気だったというのです。

普通なら「ただの夢だろう」と思うような出来事です。わたしもそう思い、指摘しました。
しかし、母ははっきりと否定しました。
「絶対に起きていた、実際にあった出来事だ」
と。

『もう一人のわたし』は、一体何者だったのでしょうか…?

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