実話系・怖い話「染み付く想い」
事故のあった場所や、殺人事件のあった場所で嫌な雰囲気を感じるのは、誰にでもある事だと思う。
強い恨みや悲しみっていうのは、血液のようにその場所に染みついてしまうのかもしれない。
染み付いてしまうのは何も場所に限ったことじゃない。人にも、物にも、時間にもきっと、強い思いは染みこんでしまうんじゃないかと思う。
中学の頃に事件があった。
朝からヘリが煩わしいなと思っていると、朝礼で全員すぐ帰るようにと言われたんだ。その時はなにか事故でも起こったのかと皆で憶測を飛び交っていたのだが、どうやら同じ学校の生徒が自分の親を殺してしまったらしい。
当人はすぐに捕まったのだが、凶器をどこに捨てたか覚えていないらしく、その子の自宅周辺や学校周辺に警察がウロウロしていたのを覚えている。
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その事件が起こってからしばらくすると、通学路途中にある公園内を赤いモヤが走り回っているという噂が出始めた。
実際に見た人の話では、夜にヒト型のようにも見えるモヤが、四肢をめちゃくちゃに動かしながら走っているんだとか。
興味はあったけど、自分が体験するのは嫌なので暗くなったらその公園にはなるべく近づかないようにしていた。
気を付けてはいたが、ある大雨の日、下校時刻が少し遅くなってしまった。
いつもなら気にならない程度の誤差だけれど、その日は朝から薄暗く、降りしきる雨のせいで気分的にも世の中が暗く見える。
耳障りな雨音の合間に、幹線道路を走る自動車の音が遠く聞こえる。
すれ違う人もほとんど無く、明るいんだか暗いんだか分からない空から鬱陶しいほどに雨が落ちてきていた。
例の公園に差し掛かると、見たくないと思うのに独りでに足が止まってしまった。
公園には遊具がほとんどない。
手前に小さな砂場とベンチがあり、奥は子供が走り回るにはちょうど良い大きさのグラウンド。
土砂降りの公園で遊んでいるような子供は無く、その光景を見て妙に安堵した。
その安堵を確実な物にしたくて一歩公園に踏み込むと、グラウンドを取り囲む植え込みの一画に目が留まる。
まばらに植わった木の陰から、こちらを伺う顔が見えた。
顔と分かるのに、男だったか女だったかはよく覚えていない。特徴の無い、赤い人の顔。
怒っているふうでも無く、何の感情も見て取れないのが余計に恐怖心を煽った。
雨に流されるように浮き沈みしながら顔はそこへ浮き、やがてそのまま消えた。
それからすぐに、テレビで例の事件の凶器が発見されたとあった。
見つかったのはあの公園。
ちょうど私が赤い顔を見た植え込みに、投げ捨てられていたらしい。
あの赤い顔は、凶器に染み込んだ亡くなった人の思いが現れたものだったのだろうか…。
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