実話系・怖い話「T家の不思議事情」
最近、鍋にはまっていて仲間内で頻繁に集まって鍋をするのですが、その際にいつも集まる場所が友人Tの家です。
Tは旦那さんと自分の実家で暮らしているのですが、この実家が昔からしょっちゅう「出る」家らしいのです。
しかしTやその家族から体験話を聞いていても、自分にはまったく霊体験等が皆無なので、話半分に聞いていました。
出る出ないは別にして、Tの家は家族みんな仲良しで居心地がよく、集まった私たちもついみんなで盛り上がってしまうような家族です。
しかし先日鍋をした時は、たまたまT以外の家族はみんな出かけていました。Tの旦那さんは残業だということで、久し振りに友人のみの集まりだね、と遠慮無い会話や料理を楽しんでいました。
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そのときT家の玄関が開く音がしたので、旦那さんが帰ってきた!と思い
「おかえりなさーい」
と声をかけたのですが、何も言わず台所の横を通って二階へ上がって行ってしまいました。
T家の玄関は、台所の横の廊下を通って真っ直ぐ二階への階段へ繋がっていて、人が通ると台所の扉の細長い磨りガラスごしに人影が見える作りになっています。
「あ、もしかして、ここの所頻繁に鍋してるから旦那さん迷惑だったかな?」
Tちゃんに声をかけましたが、いまいち会話がかみ合いません。
それにいつもなら旦那さんが帰ってきたら一旦席を離れていくのに、Tはそこにまだ居ます。
それからしばらく時間が経ち、いつもなら賑やかな旦那さんが鍋の席にとっくに登場していてもいい頃合なのですが…いくら待っても旦那さんは現れません。
さすがにちょっと心配になってTに声をかけました。
「Tちゃん、旦那さん降りてこなくない?具合でも悪いんじゃないの?」
するとTちゃんは怪訝そうな顔をして
「?旦那まだ帰ってきてないよ?」
えっ。
でも、玄関が開いて、そのまま二階へ行ったじゃない。私、おかえりーって声を掛けたじゃない。
と私が言うと
「そう、あなたが突然おかえりーって言うから、誰か帰ってきたのかと思ったけどそんな気配全く無いし、何言ってんだろうと思ってた」
とTちゃんは怪訝そうな顔をするばかり。
そんな事ないって!誰か絶対上いる!と主張する私に、Tちゃんがヤレヤレと二階に上がっても、やはり誰もいないとのこと。
でも私は確かに、玄関が開く音、磨りガラス越しの人影をみたのです。
その人影は…と思ったときにハッとしました。
私は磨りガラス越しに人影を見たには見たけれど、足元しか見てないということに気がつきました。
黒いスラックスに、黒い靴下の右足しか見てないのです。
それをTちゃんに言うと
「あらー、亡くなったおじいちゃんかもしれないわー」
と笑いながら
「ついにあなたも見ちゃったね…」
って言うんです。
Tちゃんの家では、こういった事が良くあるらしいんです。
慣れてるTちゃんは当たり前のように笑うのですが、こういった事に経験の無い私には十分怖い話で、その後鍋の間中、トイレにいくのも人について来てもらいました…(笑)
それ以来、Tちゃんの家で集まっても何も体験していないので怖い気持ちは薄れましたが、Tちゃんのご家族は未だ家の中で不思議な出来事を見聞きするそうで、鍋のたびにそれ系の話が絶えません。
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