学校の怖い話「小部屋の黒い手」
小学生の頃の話。うちの学校では三年生以上になると放課後の掃除当番に特別教室の掃除が追加される。
私のクラスは図書室の掃除が割り当てられていた。
教室と違って絨毯敷きだった図書室は、ホウキでなく掃除機を使えるので、そこそこ人気のある場所だった。
その図書室のすぐ隣には小部屋があり、名前は忘れたが随分難しい内容の本ばかりを並べてあった。鍵こそはかけられていないものの、扉一枚隔てた小部屋は薄暗くて埃臭く、どこか寒い。
噂では黒い手が襲い掛かってくる、なんて話があるので余計に気味悪く感じてしまう。
そんな場所だから、隣の小部屋だけは誰も入りたがらず、ほとんど掃除していなかった。
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しかし掃除をさぼればいつかは気づかれてしまうもので、運悪く私たちが当番の時にサボりがバレてしまい、ちゃんと掃除するようにときつく言われてしまった。
しかしとにかく誰もが嫌がる場所なので、ジャンケンで負けた奴が掃除をするという事になった。
結果、班長が負けて掃除機を従え小部屋に消えていく。
しばらくは何事も無くそれぞれの持ち場を掃除していたのだが、急に
「ぎゃあー!」
と言う声をあげて班長が小部屋から飛び出してきた。
みな何事かと集まると班長は
「出た、出た」
と繰り返すのみ。
女の子たちがそれを幽霊だと解釈してキャーキャー騒ぎ出すと、先生がやってきてまた叱られた。
必死に
「班長君が幽霊を見たんです」
と女の子が訴えるが先生は聞く耳を持たない。肝心な班長は青い顔をして黙りこくっている。
しつこい女子たちに痺れを切らせ、先生が小部屋を見に行った。
ややあって先生が小部屋から戻り、何も無かったからふざけてないでちゃんと掃除しないさいと言って図書室から出て行った。
誰も何も言えなかった。
班長が何で黙っているのか、何を見たのか、多分、全員が気づいていたと思う。
小部屋には確かに、何かが居た。
小部屋から出てきた先生の背中に、確かに、黒い物が居た。
大きく脚を伸ばしたアシダカグモが…。
遠くで先生の悲鳴が聞こえた。
こうして図書室の小部屋には大きなアシダカグモが出る、という話がいつの間にか捻じ曲がって、黒い手になったんじゃないかということで私たちの間では結論が出た。
でも真相が分かったあとも黒い手の話は無くならなかったし、帰り際に班長の言った言葉が今でも耳に残っている。
「あれじゃない…」
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