人間の怖い話「数学のできる中学生」
中学の時、とても頭のいい中学生がいた。その子は特に数学がよくできた。
その素質は学校の先生たちも認めており、その子も勉強熱心なことから、ゆくゆくは大学へ進学し大学院も出て数学者になるつもりであったし、周りもそうなって欲しいと願っていた。
しかし、人生というものはわからない。
その子の父親の工場が倒産し、家族は路頭に迷うことになった。
その子は大学はおろか、高校進学も厳しい状態となった。
そんな時に都合よくその子の進学を工面してくれるツテもなく、仕方なくその子は中卒で働くことになり、二度と学校に戻り勉強することはなかった。
それでもその子はもともと勉強が好きだったので、仕事の合間を縫っては独学で数学の勉強を続けていた。
彼は必死で勉強した。
貧乏だったので、参考書などに割くお金はなかった。しかし鉛筆とノートだけで、自分なりに理論を研究していった。
一方、中学時代の同級生たちは高校、大学と経済的にも精神的にも余裕で進学していった。
そしてサークル活動や飲み会に興じ、快楽に溺れた青春を謳歌していた。
彼は、そんなかつての同輩達を愚かに感じた。せっかく恵まれた環境に置かれているのに、それを無駄にしているからである。
彼は仕事の合間を見つけては勉強し続けた。亀はうさぎをぬかし、アリはキリギリスより、最終的には栄えると信じていた。
そんなある日、彼は自分が考えた理論が完成したと思った。
それは大学ノート数冊分に及ぶものであり、その中は様々な数式や記号で埋め尽くされていた。
彼は自信満々でそれをかつての同輩に見せた。自分は「すごい理論を考え出した」と自慢しながら。
しかしそのノートを見せられたかつての同輩は、それを見て
「これ、ただの初歩的な3次方程式の解き方じゃねーか。まだ、こんなことやってたの?何の役にも立たないし、俺たちはもっと高度な数学を勉強してるよ?」
と言った。
それを聞いた彼は、何も言い返せなかった。
後日、かつて数学の天才と言われた彼は、首を吊った姿で確認された。
参照:【じわ怖】数学 【じわ怖】じわじわ来る怖い話まとめ
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