実話系・怖い話「どぶ川のフサフサ」
ウシガエルって知ってるかな、アマガエルみたいに小さくて可愛い奴じゃ無くて、茶色って言うか灰色って言うか、よく分かんない色でデカくてどっしりしてんの。
鳴き声もえらい太くて、牛みたいだからウシガエルなんだって、田舎のじーさんが教えてくれた。
そんな田舎のじーさんちの近所に、ウシガエルがやたらと多く生息する川があったんだ。
田舎の川って言うと、水面がキラキラして清浄な印象の物を想像しがちだけど、あの川には各ご家庭から垂れ流される生活排水が流れ込んでた。
水かさも低くて、定期的に雨が降ってくれないとすぐに嫌なニオイを発するような川だ。いわゆるどぶ川って奴だな。
そんな川に住んで、厳めしい容姿の蛙はどこか化け物じみて見えたし、夜になると響くあの鳴き声も怖かった。
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夏休みになるとじーさんちに泊りに行くのが恒例行事になってて、その年もいつものように泊りに行きしばらくを過ごした。
滞在日程の半分くらいを過ぎた頃だったと思う。夜に花火をしたあとに、父さんが近くの自販機に酒を買いに行くと言うのでそれについて行った。
自販機は例のどぶ川を越えて、大きな道路の近くまで来ないと無い。
地面はそこそこ舗装されてはいるが、川周りは草が生い茂り、街灯も少なく、夜にはあまり歩きたくない道だ。
父さんと並んで歩き、川の手前に来るとウシガエルの低い鳴き声が聞こえてくる。
汚い鳴き声だなと思いつつ、暗い川を見ていると、家々から漏れる光で何かが浮き上がったように見えた。
蛙が跳ねたのかと思い、よくよく見てみると、蛙にしては妙にフサフサした具合だった。
父さんにも声をかけて一緒に見てもらったが、一瞬目を離したすきにそのフサフサは居なくなっていた。
汚い川なので、草か何かを見間違えたんだろうと言われた。
酒とジュースを買って折り返し、また同じ場所まで来て川の中を覗き込むが、やはりフサフサは居ない。やはり見間違いだったんだろうと思って橋を渡ると、すぐ足元でウシガエルの鳴き声が聞こえて驚いた。
もうちょっとずれていたら踏んづけていたところだ。
結局その日は何事も無く過ぎたが、翌日になって大人たちがやけに騒がしかった。
例のどぶ川で死体が上がったんだってさ、けどあんな水の少ない川で自殺ってのも変だ。どうやら他殺らしいとかなんとか言ってた。
てことはだ、あの時見たフサフサは死体の頭で、死体のそばに動かした犯人が居たんじゃないかと思うと今でもほんのり怖くなる。
あのフサフサは、新種のウシガエルだったのか、オバケだったのか、それとも死体だったのか…。
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