恐怖の泉

人間の怖い話「外国の路面電車で強盗発生」

もう10年位前。アメリカに留学中、学校から路面電車で帰っていた時の話。
夜10時頃だったかな。電車の中は結構人が多くて、いつも通り私はぼんやり音楽を聴きながら外の夜景を見てた。

電車が住宅街に差し掛かった頃、ある停留所で男が乗り込んできた。
男はどこにでもいる感じの白人さん。全体的に黒っぽい格好をしていたのを覚えている。
その男がステップを上がってきた瞬間に運転手が何かを叫んだ。

言葉はよく聞き取れなかったけど、男の大声に車内が一瞬で異様な空気になったのが肌に伝わってきて慌ててイヤフォン外して見てみたら、運転手さんとその男が揉み合いになってた。

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もうこっちは唖然。
何か怖いことが起こってるんだけど、さっぱり状況が理解できない。
運転手さんがしきりに黒い棒みたいなので男を叩いてて、男は料金箱にしがみ付いてる。
その男の右手がふっと上がった時に黒い塊が見えた。

銃だ!ってなって乗客全員パニック。でもドアは閉まったまま。運転手さんは格闘中だからね!

私も慌てて立ち上がったけど、出口にすし詰め状態で恐慌に陥っているアメリカンに混ざったら多分圧死する、ってなぜだか冷静に判断して、座席にうずくまることにした。

え、私死ぬの?すごいな、強盗とか本当にあるんだ。
待って、隠しておきたいデータがパソコンに…。

とか色々よぎったけど、不思議と震えはなかった。
怖いけど椅子の隙間から運転席を見たら、まだもみ合ってる。
運転手さんが男の服を掴んで押し出そうとしてて、男が抵抗してる感じ。
でも銃を撃たないところを見ると、銃は脅しか、それともモデルガンかもしれないって思いはじめた。

そうこうしている間に、後ろの方から体格のいいアメリカンな男性が加勢に入り男を車外に摘まみ出す。
後は本当にあっという間で、急いでドアを閉めた電車は2ブロックぐらい走り停車。

今度は男がまた戻ってくるかもしれないのと、警察の鑑識がくるからってことで、1時間以上その場で誰一人下車することができなかった。

確かに強盗も怖かったけど、強盗事件から約一時間後、普段歩かないような深夜近い外国の街で降ろされて
「申し訳ないがここより先に電車はいかない。他の電車もここまで」
って言われて、深夜近い外国の見知らぬ街(しかも強盗犯は逃走中)を一人で家まで歩いて帰ることになったのが、私にとっては一番の修羅場だった…。

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