実話系・怖い話「亀の甲羅」
川の話と言えば、高校へ通っていた頃の記憶に嫌な話がある。
高校へは普段は自転車通学で、雨が降ったらバスを使うような具合だった。
その日は登校する時間に雨が降っていたのでバスに乗り、下校の時間には晴れていたので徒歩で一時間ほど歩いて帰っていた。
歩きとなると、自転車では通らないような小道を通りたくなるもので、その時もあっちへ行ったらどこへ出るだろうかとうろうろしながら帰っていた。
途中で川がある。
山の方から流れている結構長い川で、そのまま下って行くと水門に繋がって、やがて海に出る。
その途中の河原に、亀が一箇所にかたまって甲羅干ししているのを見かけた。
亀の他にも大きい鯉みたいな魚が居て、暇な老人やオッサンが川べりに椅子を用意して釣りをしていたな。
お世辞にも綺麗な川とは言えず、雨が降れば濁って水量を増すような川の魚を釣ったところでどうするのかと思っていたが、どうもあれは食べていたらしい。
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意外と生き物が多く住み着くその川を、下校時になんとなく眺めていると、雨上がりで水の増した水面から這い上がるように亀たちが砂利の上に移動していた。
ばらばらになる事無く、一カ所にかたまって、ぞろぞろと移動して日の当たる場所に進んで行く。
その亀の中に、妙な甲羅をした奴が居るのに気付いた。
甲羅の模様が、なんとなく人の顔に見えるんだ。
その昔人面魚だの人面犬だのが流行ったし、昆虫にも人の顔のように見えるものがいる。きっとその亀もそれらの類なんだろうと思って、気味は悪いが納得した。
一応話の種になるだろうと、写真を撮ろうとケータイを構えると、釣道具を抱えたオッサンがやって来たので撮影は止めた。
今の世の中、ケータイをかざしているだけでキレる人も居るからな。
仕方なくそのまま帰ろうと橋の手摺から手を離したときに、ちらとオッサンの顔が見えて息が止まった。
亀の甲羅に浮き上がる顔とそっくりなんだ。
すぐに亀の甲羅を見てみると、やはりそのオッサンの顔が張り付いてる。
よく見ると、他の亀にも様々な人の顔が甲羅に貼り付いていたいた。
小さい男の子っぽい甲羅、女の人みたいな甲羅…。
そのまま見ていると、自分の顔に似た甲羅も出て来そうな気がして急いで帰った。
気味が悪かったが、やはり気になるので翌日にも同じ場所へ行ってみたが、その時には特に何事も無かった。
けど、それ以来ちょっと亀が苦手になってしまった。
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