恐怖の泉

人間の怖い話「黒マントの男」

あれから約20年経ちますが、今もまだ記憶に残っていて時々思い出す出来事があります。
私は恥ずかしながら当時パチンコが好きで、土・日休みの日は朝から出かけていました。

それは今は無くなってしまったフィオーレというパチンコ店でした。
あまり大きくない小さなお店でしたが、お客様の入りは良くて、狭いお店の中はそれなりに賑わっていました。

パチンコは当時も今も勝てば儲かる、負ければ損するということで、負けが過ぎると熱くなって悔しがったり、怒ったりします。
それは自己責任ですから勝ってる客を恨んだり、お店を恨んでも詮無い事と諦めます。
しかしそれは理屈であって、承知で行っていてもやはり玉が出ないとイライラして、2万・3万・5万と負けると腹の中は怒りと後悔で一杯です。

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ああ負けてしまった。金は帰ってこない。
一月分の給料、必要な生活費、毎月貯めたい貯金…。
負けてしまった金額はどう考えてもパチンコなどに捨てられるような金額ではないのです。

何故あそこに座ったあいつはろくに金もつぎ込まないであんなに出ているのか、なぜ俺の座る台はかくまで出ないのか?
あの端の台はつい今しがたまでおれが2万・3万と注ぎ込んで泣く泣く離れた台。今座ったばかりの兄ちゃんがタバコふかしながら大当たり当ててしまった。
店の奥で誰か俺を標的にしているのだろうか?こんな事ばかりあって良いのか?この怒り何にぶつければいいのか?

しかし台を拳で叩いたりして暴れるわけにもいきません。負ける人の心理はそんなところでしょうか。

それでも以前の負けがなかったかのように、またパチンコ店へ足を運んでしまうから不思議です。

その日フィオーレでまだ午前中、勝負は決まっておりませんでしたが、大当たりを何度か引いて出足好調でした。
私はトイレに行ってふんふんと鼻歌を歌いながら小用をしていました。

その時男が一人、黒いマントのようなものを着てトイレに入ってきました。
この季節にしては黒マント?何となく違和感を漂わせたその男は、こちらに来ず洗面台に向かい手でも洗うのかと思ったその刹那、自らのホースを左右に振って洗面台に対して放水を始めたのです!

私はびっくりして、馬鹿だ、変態だ、逃げたいと思いましたがまだ小用は終わらず、逃げるにしてもあの男の脇を逃げねばならない。
何より今身動きのとれない私の背後に来られたら、逃れるすべはありません。

するとそこへ、他の客がトイレに入ってきました。その方は「わっ!」と声をあげて引き返しました。
すると黒マントの男は、その男を追うように出ていきました。

わたしはぐったりして疲れてしまって、気が付いたら背中が汗だらけでした。

黒マントの男はその後どうなったかわかりません。店への恨みの所業だったのでしょうか…。
知る由はありませんが、なんとも冷や汗の出る体験でした。

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