恐怖の泉

実話系・怖い話「ヘルペス」

ヘルペスとは、ヘルペスウイルス科に属するウイルスに感染することで発病する水疱・疱疹症状のことを指します。

ヘルペスウイルスは非常に蔓延しているもので、ほとんどの方が感染していると言っても過言ではありません。
季節の変わり目やストレスを感じると、唇がピリピリして水疱が出来たりしませんか?それは口唇ヘルペスといいます。
子供の頃に誰もが患ったことのある水疱瘡(みずぼうそう)も、ヘルペスウイルスが原因です。

ヘルペスウイルスは一度感染すると体内の神経部分に一生留まり続けて、キャリア(保菌者)の体調が崩れたり、外部要因が加わったりすると再発するという特徴があります。

感染経路

ヘルペスウイルスは人から人への接触が感染経路で、非常にうつりやすいです。
ヘルペスによる水疱が潰れて体液が出ている時に強い感染力があり、水疱に直接触れなくともウイルスの付着した手、器具からも感染します。たとえ無症状であっても体液や粘膜から感染する場合や、くしゃみや咳でも感染することがあるので厄介です。
水痘・帯状疱疹ウイルスはとりわけ感染力が強く、空気感染します。

気をつけて欲しいのが、産まれて間もない赤ちゃん(0歳児)へのヘルペスウイルス感染「新生児ヘルペス」です。
過去には、赤ちゃんが可愛すぎてキスをしていたら、お母さんが口唇ヘルペス発病時だったため新生児ヘルペスを発病して亡くなってしまった…という悲しい出来事もありました。

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症状

多くは無症状だったり軽症で済むヘルペスですが、場合によっては深刻な病状となることがあります。
現在、人間に蔓延している主なヘルペスウイルスは8種類が知られております。

単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)
ヘルペスというと、この「HSV-1」と「HSV-2」を指す場合が多いです。HSV-1にはほとんどの方が思春期までに感染します。
唇周辺に出来る口唇ヘルペスは、この型のウイルスに感染することで発病します。
感染すると約1週間程度の潜伏期間があり、唇が赤くなってピリピリする・ムズ痒い・熱を帯びたような感覚等が起きた数時間後、数個の水疱が出ます。さらに発熱を伴ったり、無症状であったりとかなり個人差があります
唇の他には目周辺や角膜、手、腕に出たり、口内炎様の症状だったりと上半身・顔部分に出ることが多いです。
特に治療せず放置しても、やがて瘡蓋となって2週間ほどでキレイに完治します。ですが症状が治っても、HSV-1は三叉神経節に潜伏し続けます。
1度発病して再発しない方もいれば、頻繁に再発する方もいます。再発は同じ部位に出ることが多く、症状が軽く済みます。

単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)
HSV-1が主に上半身へ感染するのに対し、HSV-2は下半身へ感染して仙髄神経に潜伏し続けます。
HSV-2は性器(陰部)ヘルペスを誘発するため性感染症に位置付けられていますが、HSV-1でも性器ヘルペスになりえますので注意が必要です。
感染すると約1週間程度の潜伏期間を置き、ヘルペス特有の痛痒い感覚が起きた後に性器やおしり、太ももへ水膨れができます。身体の表面だけではなく、直腸や膀胱などの内臓にも潰瘍が出て発熱や痛みを伴う場合もあります。
一般的に男性よりも女性が重症化しやすい傾向があり、HSV-2は再発率が高いです。再発の場合症状は軽くなるとされています。
また出産時に性器ヘルペスが出ると、新生児ヘルペスを引き起こすので注意が必要です。

水痘・帯状疱疹ウイルス
この型のヘルペスウイルスは感染力が非常に強く、同じ空間にいるだけでも空気感染します。発病したら、周囲へ拡大するものと捉えて下さい。
初感染では水疱瘡(みずぼうそう)となることで有名ですが、その後も神経細胞へ潜み続けて帯状疱疹(たいじょうほうしん)となることがあります。
感染すると2週間ほどの潜伏期間の後、全身に強い痒みを伴った赤い発疹が半日ほどで広がります。熱は出ても38度ほどです。
発疹は水疱となり、乾くと黒い瘡蓋となって2週間ほどで治癒します。これがいわゆる水疱瘡(水痘)の症状です。
水疱瘡が治癒してもウイルスは神経に潜伏し続けます。そして帯状疱疹を引き起こします。
帯状疱疹は疲労やストレスを受けたり免疫力が低下すると発病するとされ、最初に体の左右どちらかがチクチクと痛み始めます。2~7日すると痛みのある部分に帯状の赤い発疹水疱ができて、やがて瘡蓋となって治癒します。
痛みが出始めてから完治するまでは1ヶ月ほどかかり、発疹が出る場所もまちまちです。
発病中は痛みが激しく、自然治癒を待っていると神経痛が残る場合があるので、早めに医療機関で治療を始めましょう。入院となることも少なくありません。身体を冷やすと悪化しますので、温めるように努めます。
帯状疱疹は一般的に生涯に1度しか発病しないとされていますが、ごく稀に再発する場合もあります。
ちなみに水痘・帯状疱疹ウイルスにのみ、ワクチンがあります。ワクチンは子供の定期接種なので無料、または格安にて接種することができます。
感染予防と症状の緩和に大きな効果がありますので、お住まいの自治体や最寄りの医療機関に確認して受けることをお勧めいたします。

エプスタイン・バール・ウイルス(ヒトヘルペスウイルス4型)
このウイルスはEBウイルスとも呼ばれ、無症状であることが多いため感染したことに気づくこともないです。EBウイルスは免疫細胞の1種であるB細胞へ感染し、体内へ留まり続けます。
感染して症状が出たとしても喉の痛みやリンパの腫れ、発熱くらいなので、特に治療も必要ありません。まれに「伝染性単核球症」となり、長引く疲労感や高熱、風邪様症状、肝脾臓の腫れがみられます。その際は内臓破裂の恐れがあるため、お腹を強く打たないよう注意が必要です。
感染経路が唾液のため、キス病とも呼ばれています。

サイトメガロウイルス(ヒトヘルペスウイルス5型)
CMVとも呼ばれ、こちらもEBウイルス同様に感染しても無症状であることがほとんどです。まれに伝染性単核球症や肝炎となります。
大多数の方は感染して抗体を持っていますが、潔癖傾向がある近年はCMV抗体を保有している方が減少しています。とりわけ妊娠中にCMVへ初感染すると赤ちゃんの流産や先天性の難聴、小頭症、運動障害、精神遅延といった多岐に渡る障害が出てしまう可能性があります。
また免疫不全の患者にとっては肺炎や髄膜炎を引き起こす重篤な感染症で、主な死因となっています。

ヒトヘルペスウイルス6型
ヒトヘルペスウイルス7型
赤ちゃんの突発性発疹はこのウイルスらに初感染することで発病し、1歳になるまでほぼ100%の方が感染して抗体を得ます。
一度感染するとウイルスは唾液細胞等に終生潜伏します。
突発性発疹は突然40度前後の熱が3~4日続き、解熱すると発疹が出ます。合併症として熱性痙攣が起こる場合がありますが、基本的には回復します。
悪さをすることはごく稀なウイルスですが、免疫不全の方や再発した場合、合併症が出た時は重篤な症状を引き起こします。

ヒトヘルペスウイルス8型
感染するとカポジ肉腫という血管の腫瘍や悪性リンパ腫を引き起こしますが、発病するのは極度に免疫が低下したエイズ末期患者や熱帯アフリカ出身者、地中海の高齢男性など、ごく一部です。
男性の同性間性的接触者で感染率が高いとされていますが、詳しい感染経路はわかっていません。


以上がヘルペスウイルス別にみた主な症状です。
以下には、ヘルペスによる危険な感染症を紹介いたします。

新生児ヘルペス
産まれて間もない新生児がヘルペス感染することを新生児ヘルペスと呼び、感染パターンによって「中枢神経型」「全身型」「表在型」の3つに分類されます。
感染すると1週間ほどで発病し、発熱、哺乳力の低下、活気が無くなる、脳炎等の症状が表れます。表在型では発疹が出ますが、その他では出ないことも多いです。
感染経路としては出産時の母親による性器ヘルペス接触が主ですが、口唇ヘルペスから感染することもあります。性器ヘルペスを持っている場合は帝王切開による出産が必要です。
新生児ヘルペスの中枢神経型と全身型は感染して早期に治療しない場合、およそ80%以上の死亡率、または助かったとしても高い確率で重大な後遺症が残る恐ろしい感染症です。

カポジ水痘様発疹症
アトピー性皮膚炎の方は皮膚が弱いため、ヘルペスに感染すると重症化する傾向があります。
カポジ水痘様発疹症がその代表的なもので、水痘が全身に多発拡大して合併症や発熱、リンパの腫れ、強い痛みと痒みなどが出て治りにくいです。
発病した場合は、早めに医療機関で診断を受けて下さい。

角膜ヘルペス
ヘルペスが目の角膜にできて再発を繰り返すと、視力の低下や失明する危険性があります。
片眼だけに発生することが多く、角膜の混濁が見られた場合は早急に眼科医の診断を受けて下さい。

ヘルペス脳炎
ヘルペスに感染してしまうと、常にヘルペス脳炎の可能性がつきまといます。
症状としては発熱、意識障害、頭痛、嘔吐、けいれん発作、異常行動、麻痺、言語障害、幻覚など様々です。
ヘルペス脳炎の原因はHSV-1の再発が主で、例え適切に治療したとしても30%前後の死亡率、または回復しても記憶障害、てんかん、異常行動といった後遺症が残るケースが多いです。

Bウイルス
オナガザル科マカク属のサルに蔓延しているヘルペスウイルス「Bウイルス(びーういるす)」は非常に危険で、サルに濃厚な接触をする場合は要注意とされています。
宿主であるサルがBウイルスで死亡することは稀ですが、人間に感染した場合は脳炎となり無治療だと致死率が高く(60%以上)、助かったとしても重篤な神経障害が高確率で残ります。
大量のBウイルスを扱う場合は、BSL-4(最高レベルのバイオセーフティ施設)が指定されています。BSL-4に指定されているウイルスは他にも天然痘ウイルス、エボラウイルスなどがあります。

治療・予防方法

現在のヘルペス治療方法は対処療法しかなく、神経細胞へ潜伏してしまったヘルペスウイルスを人の体内から消滅させる術は存在しません。
ですが研究が進んでウイルスを抑制することが可能となりましたので、過剰に恐れることはありません。
たとえBウイルスに感染したとしても、ヒトヘルペスの抗ウイルス剤で治療できます。

抗ウイルス剤の使用は症状を抑えたり治すだけでなく、他人への感染を予防することにも繋がりますので、症状が出たら早めに医療機関へ出向いて積極的なヘルペス対策をすることが望まれます。
ワクチンは今のところありません。

ヘルペスが再発する原因は詳しくわかっていませんが、免疫が弱っていたり、疲労やストレス、外傷、紫外線による刺激、風邪をひいている、肌の乾燥、季節の変わり目、性行為をした時等に再発する傾向があります。

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