実話系・怖い話「天然痘」
天然痘(てんねんとう)は痘瘡(とうそう)とも呼ばれ、天然痘ウイルスを病原体とする伝染症です。
非常に強力な感染力を持ち、致死率も高く、全身に水疱・膿疱が出来るのが特徴です。
仮に治癒しても膿疱の痕が出来るため世界中で恐れられ、遥か太古から人類を苦しめてきた、いわば『人類の天敵』とも言える凶悪なウイルスです。
特徴
人から人へしか感染しないのですが、その感染力は極めて強力で、感染者に触ったらもちろん近くで咳をしただけでも感染と、ありとあらゆる方法で感染します。
潜伏期間は7~17日ほどで、最初は発熱・悪寒・頭痛といった風邪のような症状があらわれます。2~4日で熱は下がりますが、ここから天然痘の本領が発揮されます。
その後顔や頭を中心に水痘・膿疱が全身(内臓にも)に広がって膿をもち、高熱が出ます。この時期を乗り越えられれば終生免疫を持って3週間ほどで治癒するとされていますが、感染した場合の致死率は40%前後です。
水痘・膿疱はその後かさぶたとなりますが、その痕は生涯残るため「悪魔の病気」と呼ばれています。
天然痘は感染してしまったら治療方法はありませんでしたが、現在では感染後でも後述するワクチンの接種等で治療できます。
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天然痘の撲滅
天然痘による被害はまさに甚大の一言で、特に言われているのがアメリカ大陸が発見された時のエピソードです。
それまでアメリカ大陸には天然痘ウイルスがいなかったのですが、ヨーロッパ人の侵入と共にウイルスも上陸。全く免疫のなかったインディアンに感染が広がり、その死亡率は90%近くにまで達して全滅した部族もあったそうです。
ヨーロッパで流行した際も、数百万人が犠牲になったと言われています。
長年人類を脅かしてきた天然痘ウイルスでしたが、その恐怖も終わりを迎えます。
天然痘には、牛痘(牛版の天然痘のようなもの)に感染したものは発病しないという言い伝えがありました。1798年、そこに目をつけたエドワード・ジェンナーというイギリスの医学者が天然痘ワクチンの開発に成功します。
そのワクチンは世界中に広がり、また世界的に衛生状態が改善したことも相まって、劇的に患者数は減少。そしてついに1980年、天然痘の根絶宣言がなされ、地球上から天然痘を撲滅することに成功しました。
しかし現在でも、天然痘の脅威が完全になくなったわけではありません。
実は根絶されたはずの天然痘ウイルスですが…アメリカやロシアは研究と称してウイルスを保管しています。
もしこれがテロリストなどの手に渡って軍事目的で使用された場合、ワクチン接種もなく免疫も持たない現代人の場合、上記したインディアンのようなパンデミックとなりえる可能性があります。
また自然界には天然痘に近い型をもつウイルスが存在しているので、いつそのウイルスが突然変異して人類に牙を向くのか…それは誰にも予測できないのです。
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