人間の怖い話「危険な隣人」
当時私はとあるマンションの最上階に住んでいたのですが、そこだけ他より広い間取りで、ワンフロアに2部屋しかありませんでした。
入居した時の隣人はスナックを経営しているおばちゃんで、会うと挨拶をしてくれる様な感じの良い人でした。
そのおばちゃんも数年後には引越しをしてしまい、しばらくは空き家になっていました。
そのうちいつの間にか男性が入居していたようですが、その姿を見た事はありませんでした。
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ある時私が寝ていると、隣の家から怒号と物が割れる音が聞こえてきました。
女性の声と男性の声が聞こえたので、喧嘩でもしているのかな?と思いましたが、それにしても激しいなと感じました。
しばらくすると静かになったので、その時はあまり気に留めませんでした。
しかしその後、週に1度くらいその様な事があり、音がうるさくて寝れないし迷惑なので管理会社に電話しようかと思っていました。
そんな矢先、隣の部屋からではなくエレベーターを出てすぐのエントランスから、女性の声で
「やめて!お願い、もうやめて!」
と叫び声が聞こえてきました。
何事かと思い自分のドアの覗き窓から外を見ると、20代くらいの女性が30代くらいの男性に殴られたり蹴られたりしていました。
女性は部屋着のままで服も髪もぐちゃぐちゃ。よく見ると鼻血がでていたり、肌が見えている部分に大きなアザがいくつもありました。
男性は素手での暴力をやめてビニール傘を持ち出し、女性を思いっきり叩き出して、女性は泣き叫んでいました。
ビニール傘は折れて分解され、そこら中に散らばっていました。
その光景はあまりにも異常で、今でも目に焼き付いています。
怖くなった私は慌てて母親に電話をしました。
状況を説明して、このままでは女性が死んでしまうかもしれない、私はどうすればいいかと聞くと、警察を呼んだ方が良いと言われました。
母親との電話を切ってすぐ、110番をしました。
しかし警察が到着するほんの数分前に男性は殴るのをやめ、女性の髪を鷲掴みにして強引に引っ張りながら隣の部屋へ戻っていたので、現行犯にはなりませんでした。
警察は通報した私に事情を聞いて、床に散らばった壊れた傘や血痕を見て、隣人に事情を聞いていました。
男性は「知らない」と言いはって、警察が出てきてと何度言ってもインターフォン越しで会話するのみ。
最後まで出て来る事はありませんでした。
それから数日後、私が夜ご飯を食べ終わってゆっくりしていると、なにやら外が騒がしい様子でした。
ドアの覗き窓から覗いてみると、警官が何人も来て隣の部屋を出入りしていました。
「何事ですか?」
と聞いてみると、道端で男性に職務質問をしていたら逃げ出して、この部屋に入ったとの事でした。
その後男性と警察が怒鳴りあう声が聞こえてきて、かなり大きな声だったので内容が聞こえてきました。
警察は
「どこにあるんや、これはなんや!」
などと言っていました。
最初は意味がわからなかったのですが、警察同士の会話や無線などの音声から、その男性が覚醒剤を持っていた事が予測できました。
こんなに身近に覚醒剤を持っている人が住んでいた事に驚くと同時に、恐怖を感じました。
以前、女性を必要以上に殴っていた出来事から推測すると、この男性は覚醒剤を持っているだけでなく、使用していたのでしょう。
その日から隣の部屋は人の気配が無くなり、私は何事も無かったかのように静かな日々を送ることができました。
最近は隣人にどんな人が居るのか分からないことが多いですが、案外身近に危険な人はいるのかもしれない、と思い知らされた経験でした。
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