実話系・怖い話「コレラ」
コレラとは、コレラ毒素を産出する細菌に感染することで起こる胃腸症状です。
コレラは非常に強い感染力から世界的な大流行が発生しており、ペストと並んで危険な感染症とされています。
衛生状態の改善と医学の進歩により、コレラは過去のように怖い病気ではなくなりました。
例え重症化した場合でも、適切な治療を受ければ回復することができます。
しかし現在でもアジアやアフリカを中心に年間で百万人規模のコレラ患者が発生しておりますので、流行地へ足を運ぶ場合は注意が必要です。
感染経路
コレラは経口感染症で、コレラ菌に汚染された水、食べ物、調理環境から感染が広がります。
感染力は世界規模に拡大するほど強いですが、人間以外には感染しません。
コレラ菌が人体に入っても胃酸でほとんどが死滅します。ですが生き残って小腸へ辿り着くと増殖してコレラ毒素を放出し、症状を引き起こします。このことから、胃の病気や不調等で機能が低下しているとコレラの発病率が上がります。
コレラに感染すると症状の有無に関わらず、2週間ほどは感染者の排泄物にコレラ菌が存在しているので注意が必要です。
コレラ菌の種類は数多くありますが、その中でもコレラと診断されて大流行するのはO1とO139の2種類と考えられています。
O1は大流行を起こした型で、生物学特性から
「アジア型(古典型)」と「エルトール型」
抗原によって
「小川型」「稲葉型」「彦島型」
に分けられます。O139は1992年に発見された新しい原因菌です。
アジア型は毒性・病原性が強く、エルトール型は毒性が比較的弱いものの流行が長引きやすい傾向があります。
コレラ菌は変異しやすく、自然界のどこにいるのか詳しくわかっていないため研究が続けられています。
また昔から存在していたはずのコレラが、なぜ19世紀になってから爆発的に感染が広がったのかは謎とされています。
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症状
コレラに感染すると5日以内、早ければ数時間内に下痢・嘔吐といった症状が現れますが、軽症であったり無症状の場合が多いです。その他発熱や腹痛といった症状がないのも特徴です。
コレラの下痢は特徴的です。1時間に1リットル以上もの量が出て、色も白く濁ります。体温は低下して34度くらいになることもあります。
O1古典型コレラで重症化した場合には、猛烈な下痢嘔吐に襲われて急速に脱水症状となり、無治療の場合だと死亡率は80%にも及びます(エルトール型・O139では10%以下)。
あまりに急激な体液の排出によって患者の皮膚はシワが増えて弾力がなくなり、目も落ちくぼんで、いわゆる「コレラ顔貌」と呼ばれる老け顔となります。
最終的には脱水症状による血圧低下、虚脱、意識消失、痙攣、腎不全、血行不良、ショック症状などにより死亡します。
胃を切除した方や体力のない子供や高齢者、他病気療養中の方は重症化リスクが高まります。
治療・予防方法
コレラの治療は、何といっても急速に失われる体液の補給が肝となります。
経口補水液で水分補給の対処をするだけでも、ほとんど全ての患者が回復することができます。
例え重症化した場合でも、抗生物質と点滴で治療できます。
このため、流行した場合はいかに医療体制を迅速に整えられるかが明暗を分けます。
衛生管理に留意していれば感染予防が可能なので、加熱した物を口にする、手をしっかり洗うなど飲食に気をつけます。
とりわけ水を口にする場合には、しっかり管理されたものか確認してから飲むように心掛けます。
ワクチンはありますが、感染を完全に予防するまでには至っておらず、研究が続けられています。日本には承認されているワクチンがありません。
例えコレラから回復しても免疫は出来ないため、何度も感染してしまう恐れがある事に注意が必要です。
日本国内でのコレラ感染は、輸入された汚染海産物を食べたり、海外渡航者が感染したまま帰国した場合に発病例がみられます。
コレラの流行
コレラはこれまで7回の世界的流行(パンデミック)が起きています。
最初の流行は1817年、インドのガンジス川河口域から始まったとされています。
そこからアジア、アフリカへ感染が拡大し、1823年まで流行が続きました。
2回目の流行は1826年から1837年まで続き、感染地域もさらにヨーロッパ、南北アメリカへと拡大。
その後も1840年から1860年、1863年から1887年、1881年から1896年、1899年から1923年と流行を繰り返しました。
これら6回の世界的流行は、O1アジア型の古典コレラが原因とされていています。
1906年にシナイ半島のエルトールで発見されたO1エルトール型コレラは、1961年インドネシアを火口に感染が拡大。
発展途上国を中心に流行して、現在も続いています。
日本においては、最初の世界的感染期の1822年に上陸してコレラ感染が広がりました。
その後も1858年に再び流行してまたたく間に全国へ拡大。
激しい症状と命を落とすまでの期間が短くコロリと死んでしまうことや、コレラという発音も相まって「コロリ」という名前で恐れられ、多い時では年間十万人以上もの死者が発生しております。
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