実話系・怖い話「眠り病」
眠り病とは、正式にはトリパノソーマ症、一般的にはアフリカ睡眠病と呼ばれる人獣共通感染症です。
サハラ砂漠より南のアフリカ大陸という、特定の地域にしか発生していない風土病ではありますが、感染すると命に関わる危険な病気です。
幸いにも原因や感染経路が特定されているため、WHOを中心として積極的に制圧対策が行われてきました。
過去には毎年万単位の方がこの眠り病によって命を落としていましたが、対策が功を奏して患者数が減少している傾向にあります。
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感染経路
ツェツェバエ類の昆虫による吸血が感染経路で、基本的には人から人への感染はないとされています。
ですが稀に母子感染や輸血、性行為による感染も報告されているため注意が必要です。
病気の原因はトリパノソーマという寄生性原虫で、これは人を含む動物全般へ寄生します。
トリパノソーマ自体は非常に蔓延している寄生虫であり、例え寄生されても無害である場合が多いのですが、ブルーストリパノソーマへ属するガンビアトリパノソーマとローデシアトリパノソーマは眠り病を引き起こします。
ツェツェバエに刺されたとしても、そのツェツェバエが上記した2種のトリパノソーマを保有していなければ感染・発病しません。
その他、トリパノソーマ類が人間へ感染すると引き起こされる重篤な病気にシャーガス病があります。
症状
2種のトリパノソーマのうち、どちらが寄生したかによって症状の進行に違いがあります。
眠り病といえばほぼ全てが、ガンビアトリパノソーマが原因のものとなります。
潜伏期間(感染しているが無症状の期間)は数ヶ月~数年と進行は遅いです。
初期症状は頭痛、発熱、筋肉痛や節々の痛み、発疹等、特徴的なものがありません。首の後ろなどのリンパ節が腫れたり、ツェツェバエに刺された部位が腫れる、内臓へ症状が出ることもありますが、初期での診断は難しいです。
眠り病の初期段階で気づかず放置して寄生虫が体内に広がり始めると、末期症状として神経に異常が出てきます。
錯乱や痙攣、人格変化、異常行動、感覚異常、躁鬱といった症状が現れ、睡眠周期が乱れ始めます。
昼間寝て夜に覚醒するといった逆転が起き、やがては常に意識が朦朧となり、最終的に昏睡状態へ陥ります。
無治療の場合だと、患者は3年以内に死亡します。
眠り病の患者のうち、数%がローデシアトリパノソーマによって発病します。
症状はガンビアトリパノソーマと同じですが、潜伏期間が数週間程度と進行が早い特徴があります。
こちらは無治療だと、おおむね3ヶ月以内に亡くなることが多いです。
ガンビアトリパノソーマは主にアフリカ大陸の西側で生息しているため、西アフリカ睡眠病とも呼ばれます。ローデシアトリパノソーマは東側に多く、東アフリカ睡眠病として分けられています。
どちらのトリパノソーマが原因の眠り病でも、治療しない場合の致死率はほぼ100%です。
治療・予防方法
投薬することで治療できる病気ですが、副作用が強いものが多く安全な薬の開発が望まれています。
初期症状の段階で治療に使われる薬は比較的安全なので、早い段階での診断治療が明暗を分けます。末期患者に使用される薬は毒性が強く使用も難しかったりと、治療は難しくなります。
一番の予防はツェツェバエに刺されないようにすることです。ワクチンは今のところありません。
一度眠り病になったとしても免疫は出来ないため、何度でも感染する恐れがあります。
ツェツェバエに刺されないようにするには、厚手の衣類を着用する、肌は露出させない、周囲と違った色の服は避ける、虫除けスプレーを使用する、水辺の藪や茂みへはむやみに立ち入らないといった対策が必要です。
余談ですが、シマウマの縞模様はツェツェバエに刺されない効果があると言われています。
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