恐怖の泉

実話系・怖い話「鳴らないはずの入店音」

これは私がまだ幼い頃に起きた出来事で、不思議な体験だったため今でも忘れずに覚えている話です。

祖父が急に自宅で倒れて、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
居酒屋を営んでいた祖父は家の1階を店舗として利用していたので、そこへ親戚一同が久しぶりに集まり、慌ただしく葬儀が進められます。

お葬式が終わる頃にはすっかり日も暮れた為、私の家族を含めた遠方の親戚は日帰りではなく、1泊することとなりました。
まだ幼かった私は葬式がよく分からず、ただ祖父の家に皆で泊まれてワイワイできるのがとても楽しかったと記憶しております。

スポンサーリンク

片付けも一段落がつき、さぁもう寝ようかと全員が一緒に床へ着いたそうです。
私は一足先に眠ってしまっていたのですが、夜中に
「ピンポーン」
と鳴り響いた音で、目を覚ましました。

祖父のお店のドアは、開けると「ピンポーン」と音が鳴る仕組みでした。
特徴的で聞き慣れた音ですから、親戚ならすぐにそれが人が入って来た入店音だと分かります。
私は眠りが深い方で、1度寝ると朝になって目覚まし時計が鳴り響いても起きない程ですが、その時だけはなぜかパッと目が覚めました。

寝ていた親戚全員が起きて
「誰だろう、こんな時間に…。」
とざわつき、叔父(祖父の息子)が先陣となって恐る恐るお店の方へ様子を見に行きました。

しかし、お店のシャッターは完全に下りた状態で鍵もかけられたまま。誰もいません。

親戚総出であちこち点検していましたが、やはり人が出入り出来る所や痕跡も無く、音が鳴るはずがありません。
ひょっとして隙間風かなんかか、地震などの揺れに反応して鳴ったのでは?という話になりましたが、祖母が言うには
「お店の入店音は、風なんかでは鳴らない。人が通らないと鳴らない。
地震が起きたって鳴らないし…そもそも誰か地震を感じた?ドアを揺らしたって鳴らないよ。」
と言って、お店のドアをガタガタさせていましたが、やはり音は鳴りません。
では何故音が鳴ったのか。誰にも分かりませんでした。

不可解な入店音はこの1度きりでしたが、なぜあの状況で音が出たのかは、未だに解明されていません。
空耳かもしれませんが、あの大勢居た親戚全員が音を聞いて目を覚まし、対応しています。
全員が同時に空耳だなんて、有り得るのでしょうか。
今でもお店はやっているので、その後も祖母にそのような出来事が起きなかったかと尋ねるのですが、やはり
「あの1回だけ。全くない。」
という答えが返ってきます。

幽霊の存在を信じてはいませんが、あの時だけは祖父が音を鳴らしたのでないかと、私は思っています。
幽霊って、やはりいるのでしょうか…。

スポンサーリンク

TOP