恐怖の泉

実話系・怖い話「シャーガス病」

シャーガス病とは、トリパノソーマ症の一つである人獣共通感染症です。
「シャーガス」の名は、この病気を発見研究したブラジル人医師・シャーガスから由来しています。
その他名称として「アメリカトリパノソーマ病」「サシガメ病」とも呼ばれます。

中南米大陸における風土病で、数百万人の方が感染して毎年1万人以上がこの病気で亡くなっていると推測されています。
対処法が判明している病気ではありますが、感染しても症状が出ない場合が多く他地域への拡散が懸念されています。

日本においても2013年、シャーガス病へ感染していたのに気づかなかった方が献血してしまい、輸血へ使用してしまった事件がありましたが…幸いにも感染が広がることはありませんでした。

トリパノソーマ症には他にも、アフリカ大陸で発生している眠り病があります。

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感染経路

シャーガス病の原因は、トリパノソーマという寄生性原虫に属するクルーズトリパノソーマです。
クルーズトリパノソーマは野生動物に広く蔓延していて、人を含む哺乳類へ寄生すると症状が出ます。

主な感染経路はサシガメ類の昆虫による吸血です。
サシガメの吸血自体では感染しませんが、サシガメは吸血する際に糞や尿をする特性があります。
その糞尿の中にクルーズトリパノソーマは潜んでおり、吸血などで傷のある部位や粘膜へ付着することで体内に侵入します。
例えサシガメに刺されたとしても、このクルーズトリパノソーマをサシガメが保有していなければ感染しません。

その他、稀にサシガメの糞尿が付着した作物を生ジュースにして飲んで寄生したり、シャーガス病に感染した患者からの輸血や母子感染、臓器移植によって感染するケースもあります。

世界中を人々が行きかうようになった近年では、気づかぬ間にシャーガス病になっていた患者が感染を広げてしまう恐れがあり、対策が必要となっています。

症状

シャーガス病は「沈黙の病気」とも言われるくらい、感染の有無が分かりにくい病気です。
例え感染したとしても生涯無症状であったり、発病するのが10~30年後であったりと、まさに沈黙を守ることが多いです。
ですが例え無症状であっても、体内は確実にクルーズトリパノソーマが蝕んでいきます。
症状は急性期と慢性期の2つに大別されます。

急性期は感染から数週間~2ヶ月くらいの間に出て、子供が発病する場合が多いです。症状は感染者のおよそ50%ほどにしか見られません。
主な症状は発熱、頭痛、疲労感、リンパの腫れ、筋肉痛、下痢、胸痛腹痛など様々です。診断すると肝臓の腫れなどがみられる場合もあります。
クルーズトリパノソーマが侵入した部分は腫れや炎症が見られ、とりわけ目から侵入した場合は「ロマーニャ徴候」と呼ばれる瞼の腫れが見られますが、いずれの症状も自然回復していきます。

急性期で治療できない場合、慢性期へと移行します。
体内で増殖したクルーズトリパノソーマは、主に心臓や消化器官へ住み着く特徴があります。
発病までは数年~数十年とバラつきがありますが、約30%の患者は心臓細胞が破壊されてしまい、心不全、心筋炎、心臓破裂といった症状へ繋がり致死的となります。
およそ10%の方は消化器官へ影響が出て、食道や腸の肥大による飲食・排泄の困難が起きます。
その他、神経障害など複数の症状が出ます。

治療・予防方法

一番の予防は南米に生息するサシガメに刺されないように対策することです。ワクチンはありません。
サシガメは日中、人目のつかない場所に潜み、夜になると人へ近づいて吸血します。特に顔や唇といった部位を狙って吸血してきます。
睡眠中にサシガメが近づけないような工夫(蚊帳などのネットを使用)や、殺虫剤でサシガメを駆除するなどが効果的です。

輸血等による感染は対策が成されていますので、しっかりと機能している内はリスク源となる可能性は低いです。

治療には駆虫薬を使用し、急性期などの早い段階で投薬できれば完治することが出来ます。
ですが慢性期まで病気が進行してしまうと、クルーズトリパノソーマを駆逐することは出来ても病変部位は治すことが出来ず、治療は難しくなります。
寄生虫によって損傷を受けてしまった臓器は、移植や手術など追加治療が必要となります。

また治療薬は効果が十分なのですが、副作用が強く長い投薬が必要なため、新薬の開発が望まれています。

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