恐怖の泉

実話系・怖い話「海外への単身赴任」

会社の命令で、上海へ単身赴任することになりました。
家族も一緒に連れていこうかと思いましたが、小さな子供のことを考えるといろいろな面で心配なことが多く、私1人でいくことになりました。

そこは日本大使館も近くにあり、当時は多くの日本人が赴任して住んでいました。
30階建てのマンションがそびえ立っており、私の部屋はそこの23階です。

大きな道路に面しているため排気ガスがもの凄く、窓を開けることはおろか洗濯物を外へ干すことはできません。ベランダもありませんでした。
代わりに洗濯機と乾燥機が付いていて、1人暮らしなのに寝室は2つ、台所1室、広いダイニングが1室と広すぎるくらいの洋風な部屋でした。

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到着して新任地での挨拶もすませて、夜に部屋へ帰って来ました。
窓の外から高層ビルが並ぶ夜景は煌めいており、なかなかです。
部屋の照明は小さいながらもシャンデリア。異国の地に来たことを実感していました。

私は日本の家族に部屋の様子を教えようと、写メをしました。時差は1時間ほどしかありませんからリアルタイムで反応が返って来ます。
ダイニングのテーブルと椅子を写メして送ったのですが、すぐに嫁から返信が来ました。

「椅子に女の人が座っている。誰?」

唐突な内容に、私は意味が分かりませんでした。
指摘された写真を見ると、椅子にコートを掛けていたのですが、確かに誰かが座っている様にも見えます。
しかし当然、私以外の人物は部屋に居ません。

「椅子に掛けたコートのせいで人が座っている様に見えるの?」
と連絡してみましたが
「いや、はっきりと女の人がみえる。」
という返事が帰って来ました。

その時は仕事の大変さで頭がいっぱいだったので、それほど恐怖感は感じませんでした。
ただ、異国の地に長い間建っていたマンションだから、そういうこともあるのかとぼんやり考えておりました。

それから毎日がまるで戦場のような日々。忙しく仕事が続き、その写メのことはあんまり気にしなくなっていました。
ただ、夜遅く帰ると誰かが部屋に居る様な気がするのです。
なんとなく、夜は一番奥の寝室へ入って鍵をかけて眠るようになりました。

日本だったら、マンションを引越したかも知れませんが、ここは上海。面倒くさいとどうしても考えてしまいます。
近くには日本食も手に入るスーパーや、和食レストランもありましたのでなおさらです。
立地条件はとても良いマンションでした。

ある夜、なにか嫌な夢を見ました。内容は覚えていません。目を覚ますと深夜2時ごろでした。
そして突然玄関の方で何かが割れる音が聞こえてきました。
驚いて玄関に行ってみると、照明ランプが床に落ち割れていました。

とりあえず後日、新しく照明を買ってきて交換したのですが…
1ヶ月後くらいに、また同じように深夜目が覚めて玄関から物が割れる音が聞こえ、ランプが壊れてしまったのです。

ちょっと気味が悪くなり、中国人スタッフに連絡しましたが「ノープロブレム」と言うだけ。
この頃から、まさかあの女の幽霊の仕業なのでは?という考えが頭をもたげました。

それから3ヶ月間、今度は私の体調が崩れ出したのです。
原因不明の微熱がずっと下がらず、体調はさらに悪化していきました。
部屋で寝ていると、変な物音や話し声のようなものが寝室の外から聞こえてきます。誰かの気配も明確に感じられるようになり、もはや私の身体も精神も限界に近づいていました。

私の体調は如何ともせず、とうとう任期を満了せずに日本へ戻ることとなりました。
実は私の前任者、前々任者も1年を持たずに帰国していたようなのです。
私で3度目。さすがに会社も事態を重くみて、その社宅に使っていたマンションの調査をすることになりました。

結果的に、その部屋で女性が自殺していたことがわかりました。詳しくはわかりません。
その後、会社はそのマンションンとの契約を解除。私以降にそこへ住む会社員はいなくなりました。

私はこれがきっかけで重い病気にかかってしまい、今も治療を受けています。
異国の地で異常があった場合は、放置しない方が身のためかもしれません。

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