恐怖の泉

人間の怖い話「ヘルメットおばさん」

長年勤めた会社を退職して、第二の職業としたのが警備員でした。
スーパーを中心としたとある大きなショッピングセンター商業施設の警備なのですが、やることなすこと初めてのことで手さぐりで業務をこなします。
主な仕事は従業員通用口の出入管理と店内外の巡回で、施設の安心安全を守り快適なお買い物環境を作るというのがコンセプトになります。

一見平和なショッピングセンターですが、警察や救急車の案件がしょっちゅうあるものです。何もない日が無いぐらいです。
特に警察沙汰は困りますが、世の中には信じられないような輩が沢山いるのです。
万引きなどは、その辺のどこにでもいるような主婦や若者が何食わぬ顔で万引きします。すっかり味を占めている常習者もいます。
当然捕まえるのですが、警察が来て家族を呼んでともう修羅場です。
組織化しているプロの窃盗集団も県をまたいで活動していたりします。

万引きだけでなく、食品売り場でお惣菜をいきなり食べたり、寝具売り場で吸った煙草を布団に突っ込んだ若者もいました。火事になったらどうなるでしょう?

そんな輩が我がもの顔で闊歩しているのです。

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ある日食品売り場を巡回していると、何か変な感覚があり振り返ると凄い目でこちらを睨むお客様がいました。
バイクを運転されるのかヘルメットを被ったままの女性です。私が今まで50年生きてきて、感じたことのない憎しみを帯びた視線でした。
私は狂気を感じて、何故あんな目で睨まれるのか頭をひねりながら、隊長や他のメンバーがいる防災センターに戻って
「変なお客様がいる」
と報告しました。
すると隊長が言うには、それはヘルメットおばさんで要注意人物の一人だというのです。
普通に買い物をするお客様なのだが、警備員に対してのみ異様な憎悪を抱いているということで、隊長も以前睨まれて付け回されたということです。
警備員にはおっかないが万引きするとか、もめ事を起こすとは無いから放っておけと言われました。

私は本当に変わった人がいるものだと思いながら巡回に戻りました。そしてまた変な視線を感じて目を向けると、いました。ヘルメットおばさんです。凄い目で威圧してきます。
私は思わず惹きつけられて一瞬目と目が合いました。するとヘルメットおばさんは何を思ったか急にものすごい勢いで突進して来ました!
警備員としてこの事態に如何に対処するべきか?と戸惑いましたが、とりあえず身をかわすことにしました。しかし走って逃げるわけにもいかず、足早にその場を立ち去ろうとしたところ体当たりをされてしまいました。
幸い何処で見ていたのか隊長と仲間が駆けつけて、ヘルメットおばさんを別室に連れていってくれました。
しかし彼女は話をしてもまるで会話が噛み合わず、結局出入り禁止を言い渡して帰しました。

ヘルメットおばさんのあの目・体当たりは怖かったですね。
なぜ彼女が警備員を目の敵にするのかは、理由不明です。

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