恐怖の泉

実話系・怖い話「野兎病」

野兎病(やとびょう)とは、野兎病菌による人獣共通感染症です。野兎病の研究者の一人であった大原八郎の名前から、大原病と呼ばれることもあります。
近年の日本では感染者がごく少数のためあまり聞きなれないかもしれませんが、北半球に広く根付いている病気です。
特に北米の野兎病菌は強毒性のものがあり、重症化の危険があるので注意が必要です。

感染経路

野兎病は本来、野生動物の感染症です。野兎を筆頭に、ネコ、リス、ツキノワグマ、ヒミズ、ヤマドリ、カラス、キジ、プレーリードッグ、ムササビ、ニワトリ、齧歯類などへの感染が確認されています。
人へは主にマダニやアブ・ノミ・蚊などの虫に吸血された場合や、菌に汚染された動物や飲食物等と接触することで感染します。

野兎病の怖い所は、感染力が非常に強い点にあります。野兎病菌は空気感染はおろか、ごく少量が健康な皮膚に付着しただけでも感染が成立してしまいます。
この高い感染力から、野兎病菌は生物兵器への利用が懸念される細菌に指定されています。
人から人への感染は報告されていませんが、可能性は十二分に考えられるので注意が必要です。

ちなみにプレーリードッグですが、野兎病以外にもペストなどの感染症を保有する危険があるため、日本では輸入が禁止されています。

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症状

野兎病菌は感染力が強いことに加え、感染部位によって様々な症状を引き起こします。潜伏期間はおよそ2~14日で、症状は突然現れます。

およそ80%以上の野兎病患者は「リンパ腺型」で、リンパ線が感染することで起こります。感染部位付近のリンパ節が痛みと共に腫れ上がり、発熱、頭痛、筋肉痛、悪寒などの全身症状が出ます。皮膚が化膿・壊死して潰瘍が出来る「潰瘍リンパ線型」となる場合もあります。野兎病の初期症状はペストのそれと似ています。
感染の主な原因は、野兎病菌を保有した虫に刺されることです。

「眼リンパ腺型」は、野兎病菌が目に入ることで起こります。眼の痛みや赤く腫れるといった結膜炎のような症状が現れ、瞼やリンパ節も腫れ上がります。

「鼻リンパ線型」は鼻への感染で、鼻かぜの症状や首のリンパ節の腫れが起こります。

「口咽頭部型」はのどに野兎病菌が感染すると発症するもので、野兎病菌に汚染された飲食物を十分に加熱せず口にしてしまうことが原因です。症状は頭痛、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、首のリンパ節の腫れなどです。

「チフス型」はまれな症状ではありますが、口咽頭部型と同じく野兎病菌に汚染された飲食物を加熱不十分で口にすると感染します。たまに感染源が不明な場合もあります。
症状は高熱、腹痛、頭痛、意識障害などの全身症状で、血液が汚染されるためリンパ節の痛みや腫れは起こりません。

「肺炎型」は肺へ感染したケースで、発熱、咳、息切れ、胸の痛みといった肺炎症状が現れます。こちらもリンパ節の腫れは起こりません。
野兎病菌を吸入したことが原因の型ですが、潰瘍リンパ腺型野兎病患者の10~15%、チフス型の50%ほどが肺炎型へ移行します。

また全ての症型において、一時的に多形浸出性紅斑や蕁麻疹といった皮膚疾患が現れる場合もあります。

強毒性の野兎病菌による致死率は、無治療の場合でも5%以下と高くはありませんが、チフス型と肺炎型を発症すると30%以上と高率になるので早期の治療が望まれます。弱毒性の菌の場合は、死亡に至るケースはかなり稀です。

治療・予防方法

野兎病は稀な病気な上、他の感染症と区別がつきにくいので医師の正確な診断が必要とされます。野兎との接触があり、上記の症状が出た場合は野兎病を疑います。
治療には抗菌薬が使用され、適切であれば発病後であってもほぼ全ての患者が回復します。

流行地である米国では予防策としてワクチンが生産されていますが、使用対象は研究者など限定的なものです。日本にワクチンはありませんが、そもそも稀な病気ですし治療もできるので問題はないと考えられます。ワクチンの効果は数か月~数年ほどとされています。感染後のワクチン摂取は効果がありません。

日本における野兎病の発生は、病名の通り野兎が主な原因となります。
ですので野兎との接触はなるべく避ける、死骸があったら近寄らない、食する場合は十分に加熱調理することで予防できます。
自然が豊かな地域に入る場合は、蚊やダニといった吸血性の虫に刺されないよう肌を守る、川の水は加熱してから口にするといった対策が必要です。

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